菅野芳秀のブログ
▼第7回・ニワトリにも日替わりランチ(05,2,3)
二十歳そこそこの頃、とても貧乏だった。よく「カップめん」の安売り品を箱ごと買ってきては、そればっかり食べていた。これってけっこう辛い。食べ始めて4,5日過ぎた頃から事態はどんどん深刻になっていく。お腹がすいても食べたいなんて思わなくなる。でも、他に食べ物がないのだからしょうがない。がまんして食べ続けていると、やがてカップにお湯を注ぎ、立ち上がるニオイをかいだだけでムカつくようになる。栄養のあるなしに関係なく、同じものを食べ続けるというのはなかなか大変なことだ。
こんなことを書いたのは、ゲージに飼われているニワトリたちの食生活が、まさにあの頃の僕と同じだと思えるからだ。
彼らの食べているものは「配合飼料」。トウモロコシや大豆粕、魚粉、カキガラなどにビタミン、その他が添加されているもの。当然のことながら、おいしさというより産卵効率を考えての組み合わせだ。
小さなかごに閉じ込められて、大きなストレスに耐えているのだから、せめて食事ぐらいは楽しいものをと思うのだが、そうはなってない。成長に合わせて、配分上の多少の違いはあっても、生まれてから死ぬまで、毎日、毎日ほとんど同じものを食べ続けなければならないのだ。
ニワトリに味覚を感ずる力がないのならばこれでも救われるのだろうが、彼らにはちゃんとその力はある。大変だねぇ、つらいよなぁ。
かごのストレスに加え、食のストレス。そんな身体からしぼり出される卵はとてもおいしいとは思えないし、ニワトリそのものに同情してしまい、食べたいとも思えなくなるよ。家畜福祉という観点からしても決してほっといていい問題ではないと思う。
さて、僕のニワトリたちはどうかというと・・・いろんな物を食べているぞ。まずは定食として、おきまりのトウモロコシ、お米くず、カキガラなどだが、それに加えて日替わりランチがある。その代表はほぼ毎日でる学校給食のお惣菜の残りだ。きのうはひじきの煮付けと焼き鯖、今日はコロッケとジャガイモサラダだった。100羽あたり、大きなタライに山盛りにあたえるのだが、待ちかねていたよと一斉に飛びつき、わずか一時間ほどでたいらげてしまう。お次は野菜サラダ。これも給食調理場から出るもので、今なら白菜、レタス、キャベツの外葉、にんじんの皮などだ。これも大好物。他には、おそば屋さんのかつお節のだしガラ、てんぷらの揚げかす・・・。周辺からいろんなものを集めてきてはどんどん与える。春から秋にかけては、日がな一日、土や草を突っついているから、まだ不足しているものを、自然の中から探しているのだろう。
「雑食性のニワトリには『雑』といえるほど多くの種類の食べ物を」だ。そのためにはニワトリにあわせて僕が動かなければならないけどね。でもそこから産まれる玉子はおいしいぞぉ。
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2006.04.16:kakinotane
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