菅野芳秀のブログ

▼消費者団体からの依頼で書いた800字

下の文章は消費者業界の新聞から頼まれた「TPPと農業」にかかわる800字の原稿です。ご笑覧ください。
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車がなくても生きては行けますが、食糧がなければ生きてはいけません。その時、人々が「空腹を我慢することができない」とすれば、食糧を持っている国に土下座するしか道はありません。
TPPのなかで最も大きな影響を受けるとされる農業の問題は、国民のいのちの問題であり、国の自立、尊厳にかかわる問題です。

よく知られているように食料自給率は39%でしかなく、TPPによって関税が撤廃された場合、27%程度に低下すると試算されています。
農業の内側にいればこの国の危うさがよく見えますが、都会ではそうではないのでしょう。たしかにスーパーに行けばたくさんの食料品が並んでいて、この国が北朝鮮の半分ほどの自給率でしかなく、輸入が途絶えればかの国の倍の惨状が繰り広げられていく・・都会では想像できません。

TPPをめぐって、私たち米作り農民は攻撃の矢面に立たされてきました。

 「日本の米は778%もの高い関税によって保護されており、消費者は不当に高い米を食わされている。」
しかし、ご飯一杯は白米で70g。4,000円/10kgの米を買ったとしても一杯は28円でしかありません。ポッキー4本分です。これをもって、「高い!外国に依存せよ」というのでしょうか?

「日本の稲作は規模が小さく非効率」
山形県の穀倉地帯にある私たちの村の水田平均耕作面積は1・8haほど。オーストラリアの3,000ha、アメリカの180haと比べればあまりにも小さい。働いてみたら分かるのですが、傾斜地が国土面積の65%占める日本では大規模農業は無理。それでも狭い農地を丹念に耕し、国民のわずか3%の稲作農家が97%の世帯を支えてきました。

いま私たちに求められているのは、TPPによる農業破壊=外国依存の道ではなく、食の安心、安全を第一とする農業と、土や海、森を始めとするいのちの資源とが調和した新しい人間社会のモデル、農業を基礎とした循環型社会を築き、広く世界に示していくことではないかと思うのですがいかがでしょうか。
2013.08.26:kakinotane
[2013.08.29]
納得・納得、そのとおりで〜す! (山さくら)

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