菅野芳秀のブログ

▼緑

あらゆるものが緑に染まっている。
田んぼも畑も山も集落も、むせ返るような緑、緑の中にある。
うっかりすると自分も緑に染まりかねない。
田んぼの中のところどころに立っている柳の木などは、かつては人間だったという話だ。

あそこの柳は隣村の建ちゃんのご先祖だった。
こっちの柳はヤスのところのひいじいちゃんだったらしい。
ヤスのひいじいちゃんの場合は、田んぼを見ながら煙管(きせる)に火をつけてゆったりとタバコをくゆらせていたらしいよ。
そしたらそのまま緑になっていったのだとさ。
途中でそのことに気づいたんだけど「ま、これもいいや」といいながらそのまま柳になっていったという話だ。
ぼーっとしているとああなってしまうんだね。
ちょっとおっかないな。
ヤスのところは自分で選んでなっていったんだけどな。
俺も田んぼに出て行くときには気を抜かないようにしないと。

緑には勢いがあるよね。いのちの勢いというのだろうか、何か生き物たちの必死の願いのようなものを感じるよ。
今日、畑のわきの木を切り、草を刈り取る予定なんだけどね、木に申し訳ないな。
草にも申し訳ない。
俺たちが生きるためだとはいえ、木や草たちを切らなければならない。
刈らなければならない。
木や草だって寿命を全うしたいはずさ。
申し訳ないな。
夕方には緑ではなくなってしまう。

ごめんな。

 (写真は我が農園の無農薬田んぼ。左のダブルクリックで拡大してごらんください。)


画像 ( )
2011.07.16:kakinotane

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