菅野芳秀のブログ

▼老けたねぇ

いま、JR東日本の駅に置いてある「やまがた花回廊」キャンペーンの冊子に、ニワトリたちに囲まれたオレが笑顔ででているらしい。それを見た座間のご婦人から電話がはいった。
「見たよ。何年前の写真なの。」
「えっ、この間撮っていったんだよ。」
「まさかぁ、ずいぶん若いじゃないのよ。」
「あったりまえだぁ、まだ50代だよ。田舎のシティボーイのつもりでいるんだぜ。」
「へー、信じられないよ。」
ウソを言ってどうするんだよ。
実物は写真よりも歳をとって見えるということか。写真うつりがわるいと思って見たのだったが。

 また10日ほど前にもこんなことがあった。2年ぶりぐらいにまちでばったりあった友人が
「あら、菅野さん、しばらく見ないうちに、ずいぶん老けたわねぇ。」開口一番こうぬかした。
なにをいってんだよ、お前だって一緒だろうがぁ。

こんなことが続いていた昨日、大きな鏡に映った自分の姿を見る機会があった。顔を映す鏡はあるけれど、全体を見ることができる鏡は我が家にはない。久しぶりのことだ。そして・・。

そこに映っていたのは、白髪まじりの薄い髪。顔の肉はだぶつき、しわのようになって垂れ下がっているどこかうらぶれた男。大きな身体であることには変わりはないが、心なしか腰が曲がって見えるくたびれた農夫。
そして最も肝心なことだが・・・オーラがない。エネルギーが感じられない。全体的にくすんでいるのだ。
なに、これ!これはオレではない。

鏡の中の自分の姿を見ながら、オレは、我が家のオンドリのことを思ったね。覚えておいでだろうか?たくさんのメンドリたちに囲まれたオンドリの悲哀。「もてすぎるのも困りもの」(05,9,1)にすでに書き、たくさんの男達の涙をさそったあの切なくも悲しい物語・・。

100羽のメンドリの中の一羽のオンドリ。若いときにはハールムであった世界は、やがてメンドリたちの要求に応じられなくなって一変する。求愛に応じられないオンドリを「ツン、ツン」とつっつくメンドリたち。朝から晩まで、あっちでツン、こっちでツン、ツン・・・。みるみる間にオンドリの姿から羽根がぬけだし、鳥肌がむき出しになる。やがてオンドリはメンドリが近付くだけで逃げ出し、時には上に渡した横木の上に避難する。かつてあれほどエネルギッシュで、惚れ惚れするほどの勇壮さを誇ったあのオンドリが・・同じオンドリとは思えないみじめな姿に。オレは心からオンドリに同情したものだった。同じ男としてこころを寄せずにはいられない悲しい世界がそこにはあった。

鏡に映ったオレの姿はまさにそれ。オンドリ。もっとも誰も「ツン、ツン」してはくれなかったけどね。

さてどうするべなぁ。
姿かたちの衰えはしょうがないよ。
でもオーラやエネルギーの問題は別だ。そこには年齢に応じたものがなければならない。くすんでいるとすれば・・・。こころざしに向かって歩めているか、見失わずにその方向を見つめているか。そこのところだよ、問題は。あした、オンドリにも何が大切かを教え・・・いや、まず、おれ自身を点検、整理してからだ。
2009.04.05:kakinotane
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