菅野芳秀のブログ
▼息子の就農
今日で稲刈りが終わりますが、農繁期はまだ続きます。ブログはなかなか書けません。そこで、昨年ある雑誌に書いた文章をここに載せました。これなら他にもあります。2,3日後、また違った文章を載せますのでおいで下さい。えっ、この話は以前見たぞ、同じような文章はのっけているではないか・・・とか、いい分はおありでしょうが、ま、いいじゃないですか。
我が家の農業経営は、水田2ヘクタールに畑が少々、それに自然養鶏900羽。山形県の朝日連峰の麓、純農村地帯の一隅で農業を営んでいる。80代の両親と50代の我が夫婦。そこに昨年4月、農業専門学校を終えた息子が帰ってきた。以来、今日まで、田んぼだ、畑だ、ニワトリだとよく働いている。
「あんなに働いてくれて悪いなぁ、もごさいなぁ(かわいそうだなぁの意)。家のためなら、うんといいけど・・。でも、よろこべないなぁ。気の毒なような、かわいそうなような・・。こんなことさせていていいものか?このまま歳とらせていいものかといつも思っているよ。」
息子が出かけた夜に、88歳の母親はため息まじりに話す。
「家の犠牲になっているのではあるまいか。本当に百姓すきならいいけど、でもそうでなければさせられない。もごさくてよぉ、あの子のこと・・・。」
現在の日本農民の平均年齢は60代後半。我が村の農家の平均年齢も67歳。昼間は田畑にほとんど若い人の姿は見当たらない。
お米は20年前と比べ、一俵(60kg)あたり、1万円も安い。それに3割を超える減反があり、野菜は洪水のごとく海外から押し寄せ・・と、まぁ、こんな按配だ。若い人はとても就農できない。
百姓仲間の造語に、「とき(時)が来る。トキになる。」という言葉がある。時代は生命系の回復に向かい、農業の価値がみなおされようとしているとは言うのだが、その到来をまえに、われわれ百姓は「佐渡が島のトキ」になっちまうよ、という意味なのだけれど、実感だ。
日本に農業はいらないのかい?日本の穀物自給率はたったの27%。世界でも最低ラインに近い。「飢餓の国・北朝鮮」とはいうけれど、それだって穀物自給率は日本の倍の53%だ。日本の食糧事情はすでに破綻している。輸入によって事実が隠されているにすぎない。
「もうすこし、あの子も世の中見えるようになれば、まだ歳若いから、大丈夫だから・・、何して生きていくか考えんなねごで。」
88年間、いろんなものを見てきた母が、農業では幸せにはなれない、離れたらいいと話す言葉には説得力がある。でも、息子は充分そのことを知った上で、農業をやろうと帰ってきた。その気持ちが続く限り、それを支えてあげなければと思う。
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2008.10.17:kakinotane
[2008.10.22]
こういう話は、私には難し過ぎですけど・・・考えてみますね。 (山さくら)
[2008.10.21]
お母さんの言葉、いいですね。 (くみ)
[2008.10.20]
ぼくは統計数字を持っていないのですが、・・ (tu-ta)
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