菅野芳秀のブログ

▼ホッカムリして手をふって

 いま、田んぼには誰もいない。オレが農業に就いた30年ほど前は、今頃の昼でも田んぼのあっちこっちに農民の姿を見ることができた。それがやがて朝晩だけとなり、いまはそれすら珍しくなっている。

 じゃ、農民はどこで何をしてるんだい。怠けてるんじゃないのか?日本中の人たちが、食糧問題で困惑しているのに、肝心の日本の百姓がこれじゃ困るじゃないか!百姓はどこにいったんだぁ!

 我が村の農民の平均年齢は67歳。昼は・・・孫の子守とか・・・。でもね、勘所を押さえて、田んぼが荒れないようにはしてるんですよ。だけど、なんせ67歳だからさ。

 オレがたまたま田んぼに出ているとき、その側を観光バスが通って行ったことがある。バスはスピードを緩め、中の客のほとんどがこちらをむいていた。ガイドさんがオレに手を振っている。なんだろう?知ってる人じゃないのに。オレも手を振り返してやった。バスはそのまま通り過ぎていったのだが・・・そこからオレはバスの中でのこんな情景を思い浮かべた。

「みなさま、右手をご覧下さい。あれが百姓でございます。日本の原風景を訪ねる旅、ようやく田んぼのなかでのどかに草をとっている百姓を見つけることができました。最近では彼らを見かけることがとんと少なくなっていました。よかったですね。しかも昼間にですよ。やっぱり田んぼには百姓ですねぇ。風情がありますよ。あっ、手を振っていますよ。みなさんもどうぞお愛想してください。」

 ま、こんなとこだろうな。でね、オレはさ。も少しサービスしてやろうと思ってな、その後はなるべく汚い手ぬぐいでホッカムリしてよぉ。腰まげてぇ、鼻垂らしてぇ、手を振ってやろうかとおもってんだよ。彼らのなかの原風景にこたえてやろうかと思ってな。喜ぶだろうなぁと。でも、もう来なかったけどね。エッ作り話だって?ホントの話だよ。ホント、ホント!

(写真は穂が出始めた田んぼ)

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