熱橋(ヒートブリッジ)による熱の損失と侵入

  • 熱橋(ヒートブリッジ)による熱の損失と侵入
内(充填)断熱の最大の欠点は、何といっても構造躯体そのものが、非断熱部分となることで、室内と室外の温度差の激しい季節においては、熱橋(ヒートブリッジ)という文字どうり熱を伝える橋となります。

木造であれ、ツーバイであれ、鉄骨であれ、構造材は、基本的には断熱材ではないので、おのずと非断熱部分(全体の20%前後)となり、熱橋の影響を受ける形となります。

※ 内断熱の熱橋比率は、在来木造の場合は17%・ツーバイは22%で、断熱部分は、在来の場合は83%でツーバイは78%とされています。



熱は、高い所から低い所へ移動しますので、冬は、室内の熱損失を助長し、夏は、外壁の裏側から、日射熱を室内に侵入させる要因となります。

そして、内断熱の場合、画像の様に、断熱部が途切れる数多く発生し、後々断熱部と非断熱部の隙間が大きくなっていくという認識も必要です。

当然、住み心地の悪さや光熱費に影響を及ぼしますが、それより怖いのは、壁体内の温度差による壁体内結露であり、結露がもたらす断熱性能の低下や構造の腐朽となります。

また、長期間、熱による収縮と膨張を繰り返すことで、狂いや痩せ・割れといった構造の変形・毀損を招き、構造用金物のボルトの緩みや錆びなどの劣化が進み、耐震性の低下はもとより、家そのものの耐久性も低下してしまうのです。

昨年4月の熊本地震において、旧耐震の住宅のみならず、新耐震基準の住宅でも、半壊や全壊の被害は多発しましたが、こうした経年劣化による耐震性の低下も大きな要因となっています。

参考までに、主な建築材料や断熱材の熱伝導率を比較してみましょう。

<建築材料>
〇 杉・ヒノキ0.12W/mK
〇 軽量気泡コンクリート0.17W/mK 
〇 コンクリート1.6W/mK
〇 鋼材53 W/(m K)W/mK)
 
<断熱材> 
〇 グラスウール16K0.046 W/mK
〇 高性能グラスウール24K0.036W/mK
〇 吹き込み用グラスウールGW-1- 0.052 W/mK・30K相当 0.04 W/mK
〇 ロックウール0.038W/mK
〇 ポリスチレン3種0.028W/mK
〇 ソーラーサーキット断熱材0.024W/mK  ※0.022W/mK もございます。
〇 フェノールフォーム断熱材0.022W/mK

※ 数値が低いほど断熱性能が高い

鉄骨の熱電導率は大きすぎて、比較するまでもございませんが、断熱性がある程度有する木材でも、熱伝導率は0.12W/mKと大きいのがお分かり頂けると思います。

そして、この熱伝導率を用いて、各材料の熱の抵抗値を算出することが出来ます。

熱抵抗値とは、材料の熱の伝わりにくさを表す値です。

裏表に1℃の温度差がある場合に、ある厚さの材料の中を、面積1㎡あたり、1秒間に伝わる熱量の逆数で、当然、値が大きい程、熱が伝わりにくく、断熱性能が高いということになります。

熱抵抗値(m2・ K/W )は、材料の厚さ[m]÷熱伝導率W/(m・K)で求められます。

例えば、柱3寸5分(10.5㎝)の場合は、0.105÷0.12=0.875(m2・ K/W)の熱抵抗値となり、グラスウール16Kで厚さ100mmの断熱材の熱抵抗値は、0.10÷0.046=2.17m2・ K/Wとなります。

つまり、一般的な充填断熱の場合、高性能グラスウール断熱材2.17m2・ K/Wと、同等の性能を柱に求めると、2.17(熱抵抗値)×0.12(木の熱伝導率)=0.26 となり、柱は、26㎝角(7.5寸)の太さが必要で現実的ではありません。(16KのGWだと33cmの柱になる)

要するに、壁の内部は、熱抵抗値2.17m2・ K/Wの断熱部分と熱抵抗値0.875m2・ K/Wの構造部分が混在することで、壁体内での温度ムラによって、目に見えない壁の中で、様々な不具合が生じる危険性が高いのです。

たとえるなら、厚いセーターとシャツが、交互に混在している洋服ということになり、とても着心地の悪い洋服になるのではないでしょうか。

一方、外断熱の場合は、構造材も室内側になり、熱橋にはならず、断熱性能が長期間にわたり維持され、構造部は蓄熱体として輻射熱の効果さえ生まれるのです。

少々、面倒な話になってしまいましたが、断熱を考える場合、熱橋は非常に重要なポイントとなりますので、是非ご理解いただければ幸いです。

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