暖房費は一生払い続ける生涯コスト

  • 暖房費は一生払い続ける生涯コスト
画像のグラフは、東北電力のHPにアップされている、家庭における用途別の消費エネルギーを表したものです。

ご覧の通り、東北地方は、全国と比べると、消費エネルギーに対し、暖房や給湯の比率が大きく、光熱費も他地域よりも増えているのがわかると思います。



そして、H23年度の総務省のデータによると、東北地方の一世帯あたりの平均光熱費は、年間で247,000となっております。その後のデータは公表されていませんが、電気も灯油もガスも値上がりしていることを考えれば、おそらく現在は、300,000位になっているのではないでしょうか。

そして、原油価格は今後も上昇するのは必至の情勢で、益々光熱費の負担は大きいものとなり、生活防衛の観点からも光熱費の負担を抑えていかねばなりません。

下のグラフは、家の断熱性能を表すUa値(外皮熱貫流率)の違いによる暖房の消費エネルギーを表したグラフで、基準値0.75の建物と東北電力で推奨する0.46の建物との性能との比較です。

※ 0.46という数値は、HEAT20という民間団体の推奨しているG1グレードの基準値です。
HEAT20について、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。



家の大きさが120㎡(36.5坪)で、外気温-2.8℃・エアコンの設定温度を22℃にした場合の、1時間当たりの消費エネルギーとなりますが、計算はとても簡単です。

外気温-2.8℃とエアコンの設定温度22℃ですので、内外の温度差は24.8℃になります。

この数字に外皮面積312.8をかけると7757になります。この数字にUa値の数字をかけると1時間あたりのその家の大体の熱損失量がはじかれます。

ワット表示で、分かりにくいと思いますが、この数字が、内外温度差24.8℃の場合に、その家全体を暖める暖房の必要エネルギーになり、この数字をベースに、家中を24時間暖めた場合の消費電力や電力料金を比較すると、断熱性能の違いによる家の良し悪しがある程度理解出来る様になります。

2年後に義務化となる省エネ基準で定められているUa値0.75の場合は、

消費エネルギーが1時間当たり5,818Wとなります。この数字をベースに、暖房効率を表すCOPを5として、計算すると、実際の消費電力は、÷5で、1,163Wとなります。この数字に電力の1KWあたりの単価を27円として計算すると1時間当たりの電気料金は、31.4円となり、24時間運転すると754円になり、30日間で、22,620円となり、月額暖房費の目安になるわけです。

※ 再エネ賦課金は含まれておりませんが、賦課金の計算する場合は、1163W×24×30で837,360となり、837.36KWの消費電力となるので、5月から値上げとなった賦課金1KWあたり2.9円をかけると2,428円が実質プラスになります。

一方、Ua値のレベルを上げ0.46Wにして、上記の計算をすると

3,568W÷5=714W 714W×27円=19.3円 19.3円×24時=463円 
463円×30日=月額13,890円となるのです。

※こちらの賦課金は、約1,490円になります。

ちなみに、弊社のソーラーサーキットの標準の断熱仕様のUa値は、建物によっても違いますが、0.4~0.43位です。

0.43で計算すると

0.43×7757=3,336W 3336W÷5=671W 671W×27=18.1円 18.1円×24時間=434円
434円×30日=13,020円となり、0.40で計算すると12,063円となります。

ただ、理解しなければならないのが、Ua値は、いつも説明しているように、あくまで計算値であることと、24時間換気による熱損失や、C値(家の隙間相当面積)の違いから生じる漏気量は、考慮されていないために、施工が悪かったり、3種換気を使用したり、気密が悪かったりすると、数値どうりの性能は発揮されず、暖房費は、大幅に増加してしまうのです。

私が、いつも簡易的に、エアコンの必要容量や暖房費を計算する時に、用いるのはQ値(熱損失係数)ですが、この計算に家の隙間による漏気分の熱損失をカウントした場合の光熱費が下記のグラフの計算となります。



この計算も、あくまで数値に基づいての試算であって、施工精度が悪ければさらに暖房費は増加し、経年変化による性能の低下も考慮しなければなりません。

また、換気を3種換気にした場合の、熱損失は考慮していないために、3種換気の場合の暖房費は、大幅に跳ね上がってしまうのです。

問題なのは、折角家の中の温度差を無くして、省エネで快適にストレスのない、健康な暮らしを求めて、家を建てても、断熱の悪い家は、光熱費が負担となるため、どうしても節約意識がはたらいてしまい、換気を消したり、いる部屋だけ・使う時だけ暖める局所暖房や間欠暖房になってしまうのです。

エアコンは、風や音が気になり、乾燥するから苦手という方が結構いらっしゃいますが、エアコンは、室温を低い時から高くする時には出力が高まり、運転音や風が気になりますが、一定の温度をキープする運転だと、ほとんど気にならないもので、これは、車における市街地での走行と高速道路での走行時のエンジン音や燃費と全く同じ理屈です。

エアコンは、つけたり・消したりすると、室温が下がり、温度を上げるたびに、負荷がかかり、効率も低下してしまい、結局は光熱費も上昇してしまうのです。

つまり、エアコンの間欠運転は、風や音で不快な上に、部屋間の温度差が生じてしまい、湿気が、寒い部屋に移動し、結露も発生しやすく、カビやダニが繁殖し、衣類にも虫がつき、空気は汚れ、風邪もひきやすく、将来、温度差によるヒートショックの危険性も高まってくるということをご理解いただきたいのです。

エアコンの連続運転に抵抗のある方も多いと思いますが、家の断熱性能が高いと、つけたり消したりする間欠運転よりも、連続運転の方が結果的に光熱費も抑えられるケースが多いということも、いつも紹介させて頂いている通りです。

http://daitojyutaku.co.jp/log/?l=452032

昨今、車の選択基準の一番大きな要素は燃費となり、売り上げの上位車種はハイブリッド車がズラリと名を連ねるようになりました。

電気に限らず、ガスや灯油も値上げが続き、光熱費は生涯コストという考え方が必要で、車同様、家の選択基準も、燃費(光熱費)を基準にするのが、あたり前となる時代は、もうすぐそこまで来ているのです。

車の燃費は、CO2の問題はあるものの、基本的には、金銭的な問題が主ですが、家の燃費を左右する断熱性能は、光熱費ばかりではなく、住み心地や、家族の健康や家の耐久性や資産価値まで左右する非常に重要なポイントなのです。

そして、車の燃費基準は、厳しい検査に基づいて出された業界統一の基準ですが、住宅の場合は、機械でも製品でもなく、施工精度が加わるために、単に数値だけでは判断ができないところが、何とも悩ましい問題でもあり、ユーザー自身が、ある程度勉強しないと、将来後悔する可能性が大きいということをご理解下さい。

※ 参考までに、簡易的に、Ua値からQ値が分かる計算式を紹介したいと思います。この算式は、断熱住宅の第一人者である近畿大学の岩前教授が公表している算式ですが

Ua値=0.37×Q値ー0.13です。

宮城県の場合の省エネ基準値はUa値0.75ですが、次世代基準ではQ値2.4でした。

上の算式にあてはめてみると

0.37×2.4-0.13=0.758

0.75+0.13÷0.37=2.378

実際の数値は、設計を基準にして計算しますが、このように、どちらかの数値が分かれば、Ua値0.75・Q値2.4と近い数字がはじき出されます。

ハウスメーカーの営業マンのレベルチェックにも使えますので、頭に入れておいて損はないと思います。





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