30年持てば十分?

冗談半分だとは思いますが、そんな長生きしないから30年も持てばいいので外断熱でなくていいよ。とご依頼を頂戴するケースがございます。

どんな家であれ、光熱費を考えなければ、冬暖かくて夏涼しい家は可能で、温度差のない暮らしと適切な換気をすれば、家も腐らずに30年どころか50年でも60年でも住み続けることは可能です。

しかしながら、温熱環境と空気環境が疎かな家で、温度差のない暮らしをしようとすると、多額の光熱費がかかる上、気密の悪さから換気不良も招いてしまうのです。

結局は、節約意識から、従来の局所暖房となり、温度差による湿気や結露・カビ・ダニの問題は解消されずに、性能の劣化が徐々に進み、建物はもちろん、住む人の健康まで脅かしてしまうのです。

人生100年時代とも言われる中、家のローン返済が終わる30年後・35年後以降も、その家で、健康に暮らし続けられるかどうかをリアルに考えなければなりません。

身体が丈夫で健康なうちは、多少の寒さや暑さ・家の温度差や空気の汚れは、健康に、すぐさま直結する問題ではありませんが、人間誰しもが年老いていくのは自然ですので、体力や免疫力が低下する老後のことも考えなければならないのではないでしょうか。

現在、日本の住宅の耐用年数は、30年にも満たず、解体される住宅の築年数は、平均で27年前後となっています。

そしてなぜ30年ももたないのかと言えば、湿気や結露による住宅の腐朽やシロアリの食害による耐久性の低下が大きな原因です。

今の新築は、40年も50年も持つのではと思っている方も多いのですが、現代の住宅も、従来の延長線の家が大半で、中途半端な断熱化と気密化によって、住み心地が悪いばかりでなく、目に見えない構造そのものも、湿気や結露で蝕まれ、これまで以上に短命になる危険性を孕んでいるという認識が必要なのです。

もちろん、構造の劣化対策もそれなりに考えられてはいるのですが、湿気や結露対策は不十分であり、結局は、結露しても腐らないような薬剤に頼った劣化対策が主流で、その効果は、どれほど持続するのか、健康への影響はないのかと言えば、誰も分からないというのが、実状なのです。

人口減少が進む中、土地という資産価値の上昇は見込めず、年金の削減や支給年齢の繰り下げなどを鑑みれば、将来の住み替えや建て替えは、よほど恵まれた方でなければ困難です。

つまり、これまでのスクラップ&ビルドという壊しては建てるというこの国の家づくりのあり方はこれからは、通用しない時代であり、いい家を造って、キチンと手入れをして、家を長持ちさせ、老後はもちろん、子や孫の世代に引き継げる長寿命の家づくりが必要なのです。

こうした話をすると、マイホームを検討している方に、水を差す様で恐縮ではありますが、単に見た目や価格だけで、マイホームを取得した方々は、後々、光熱費の負担にくわえ、寒さや暑さ・湿気や結露で、多くの不満や我慢・ストレスを感じながらの生活を強いられるケースが多く、健康を害したり、家庭不和を招いてしまうこともあるということを理解する必要があります。

予算や毎月の支払は、非常に重要な要素ですが、ここから家づくりを検討すると、大事な部分がどうしても見えなくなり、優先順位を見誤ってしまうのが家づくりの怖いところなのです。

予算を抑えた安価な建物は、いくらでも建てられますが、価格が安くて、光熱費や維持費もかからず、快適に健康な暮らしが送れ、地震に強く長持ちする家を造るのは難しく、造ろうとするとどうしても、温熱環境と空気環境が疎かな住宅になってしまうのです。

その結果、当初の予算は抑えられたとしても、光熱費や医療費・生活費の負担はもちろん、修繕費や解体費・建替えコストなど、トータルで考えれば、逆に何千万も高くついてしまうのが現実なのです。

ナイチンゲールは、「空気の汚れと身体の冷え」が病を引き起こす最大の要因だと、看護のバイブル「看護覚え書」の中で説いています。

温度差のないキレイな空気の中で暮らすことこそが、私達の健康を守る源でもあり、健康寿命を伸ばすことは、ご本人はもとより、大事な家族を守るためにも非常に重要なことです。

マイホームは、人生で一番高い買い物であり、一生一代の大事業でもあるということをご理解いただき、将来、後悔しない家づくりを進めていただきたいと思います。

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