30年持てばいい?

冗談半分だとは思いますが、どうせそんなに長生きしないから、30年持てば十分で、多少の寒さや暑さは、冷暖房で調整するから、断熱や気密はそこそこでいいよ!というお客様が、結構いらっしゃいます。

確かに、暑さ・寒さを我慢し、省エネ性や快適性・健康性を考慮しなければ、よほどの家でなければ、30年でも40年でも十分もつのではないかと思います。

しかし、考えなければいけないのは、省エネ性や快適性ばかりではなく、人と建物の健康を守るためには、何より断熱性能が重要で、従来の延長線のような家に住むということは、湿気や結露によって生じる、建物の腐朽や蟻害によって、建物の耐震性や耐久性は、著しく低下するのです。

結果、日本の住宅の耐久性は、30年にも満たない住宅が大半で、80年とも100年ともいわれる欧米の住宅と比較にならないほど短命なのが現実で、今もなおこうした住宅が造られ続けているのです。

また、温度差によるヒートショックによって、時には大切な命まで奪われてしまう危険性が生じるということを、考えなければならず、命を落とさないまでも後遺症によって、ご自身はもとよりご家族に、多くの負担をかけてしまうことになるということをリアルに考えていただきたいのです。

英国では、健康を守る最低室温は18度以上とされ、高齢者には21度以上が推奨されており、16℃以下の賃貸住宅などは、改修や撤去命令も出されるのです。

寒さに関する法規制がないのは、先進国では、日本くらいで、諸外国では、過度な寒さは基本的人権を侵害しているという認識があり、刑務所さえも暖かいのです。

これまで、日本人の多くは、寒さ・暑さはしようがなく、あたかも我慢することが節約であり、美徳という考え方があったのも、事実です。

しかし、冷暖房の普及や生活スタイルの変化によって、茶の間やリビングなど、普段いる場所だけは、大分暖かくするようになりました。その反面、廊下や水回りなど非暖房室との温度差が広がり、浴室のヒートショックで亡くなられる方だけでも17,000人以上となり、交通事故死の4倍以上の方が悲しい事故に見舞われる時代となりました。

人間誰しもが、年齢を重ねるごとに、確実に体力や免疫力が低下し、これまでは何ともなかった温度差が、身体にダメージを与えるのは必然で、ヒートショックばかりでなく、風邪やインフルエンザに加え、喘息や肺炎・関節炎や腰痛など、寒さが原因となる病気に罹患しやすくなります。

また、体温の調整機能の低下によって生じる熱中症などの危険性も少なからず上昇するのです。

こうしたリスクを抑えるためには、冬も夏も家中の温度や湿度を一定に保つことが、重要となり、断熱性能の低い住宅で、これらの条件を満たすためには、最低でも年間20万から30万円の冷暖房費が必要で、とても現実的ではなく、結局はいる場所だけ暖める局所暖房という従来の住まい方になってしまうのです。

これでは、住まいが起因する様々な病気や疾患はいつまでも改善することはなく、介護や医療費などの問題は、高齢化が益々進む日本にとって、最大の問題でもあるのです。

今日、断熱技術の進歩によって、これまでの間欠暖房と変わらない光熱費で、部屋間の温度差をなくし、一日中快適な住環境を創り出すことが、十分可能となっています。

これから、家づくりを検討する方は、子育て世代の方にしても、中高年の方々にとっても、ご本人はもちろん、家族の健康を最優先した家づくりが必須であり、病気を予防し、健康寿命を伸ばす家こそが何より重要なのです。

しっかり造るからこそ50年先も価値ある家になる訳で、そこそこの断熱で、30年間だけ、省エネで快適に、家族の健康を守り、地震にも強い家を造るのは、技術的にも不可能といえるのです。

また、現在大きな社会問題となっている空き家ですが、約820万戸存在しており、今後も益々増加することが予測されています。

こうした空き家の中には、売るに売れない、貸すに貸せない負動産といえる住宅が、かなりの割合を占めており、30年ももたないような家を造るということは、空き家はさらに増加する一方となり、次の世代に引き継ぐ時に、資産ではなく負債となる可能性が高くなるのです。

気密と断熱のしっかりした高性能な住宅は、快適で健康にやさしい住環境を創出し、住む人と建物の寿命を縮める原因となる悪の根源ともいえる結露を解消することによって、耐震性をはじめとする新築時の性能を長く維持することができる本物の長寿命住宅となり、循環型社会の実現にも貢献するということをご理解いただきたいと思います。

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