今月初めにいつもの散歩路で出会った花の可憐な姿が気に入って、今はすっかり実になったエゴノキを通りがかるたびに観察している。
エゴノキばかりに気を取られて今まで気がつかなかったが、すぐ隣に枝を絡ませるようにヤマウルシがまだ幼い実を垂れている。
ウルシといえばカブレるのが怖くて近寄りたくなかったし、ましてや観察など思いもよらなかった。
‐‐‐漆は熟すれば枝先で生長し、いよいよ稔れば木木の実が触れ合って枝頭でからからと音をたてる(藤沢周平『漆の実のみのる国』)‐‐‐ 光景は小説の中の話と思っていた。
うかつな話だがウルシに実がなることさえ念頭になかった。
たしか上杉鷹山は熟した果実を乾かして木蝋を搾ることの産業化をはかったのではなかったっけ?
商品として流通させるにはどれほどのウルシが必要だったのだろうか?気が遠くなりそうだ。
「6次産業化」などという言葉が頭をかすめた。
あの藤沢周平が描いた光景をウルシの実を通して目の当たりにできると思うと、我が老後の生活もすてたものでないと感じ入ってしまうのだ。
ところでもう一方のエゴノキ、花におとらず実も光沢があって美しい。
この記事へのコメントはこちら