熊撃ち・・・・③

  • 熊撃ち・・・・③

 

 

 

雨が降っても外で仕事をしなけりゃならん

そう言う忙しい季節になって来た

 

あちこちの田んぼには、例年より少し早めに水が乗り始めた

間もなく代掻きが始まる

 

オレも、例年より10日も早く仕事が進んでるというか

進んでるような気がする

暦やら昨年の日記帳などは見るが

殆ど肌感覚で仕事の日程を決めているので

こんな暖かい年には仕事が自然と進んでしまう

 


 

 

 

熊撃ち・・・・

 

 

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熊という生き物の足の裏は可愛い

 

小さなクマの足なんて、俺んちの子供たちが小さかった頃の足にそっくりだ

 

まるで、おっちょこちょいで可愛い野に住む人の様な

そんな愛くるしさがある

 

 

オレは、クマを撃つたび

この足をしげしげと眺めては

激しい罪悪感に襲われる

 

それは、人の様な格好の足をしたものの命を奪ってしまったという

そんな罪悪感

 

小さく生れ落ち

母の非常に深い愛に抱かれ育ち

2年3年と母と離れずピタッとくっついて共に暮らし

やがて独り立ちする

 

常に母について歩き、山や自然の事を母から教えられる

 

人だってこれほど深い母の愛情に恵まれる子は稀な気がするが

 

そんな時を過ごす彼らは

真っ黒ででっかくて、ちょっと怖い

 

でも、1匹ずつ顔も違うし個性も違うのだが

深い愛に育まれるからこそ温厚で、他を憎むことを知らない

見た目にたがわず非常に憶病でもある

愛に包まれ育つ人が、愛に溢れた人に成長するように

彼らもまた、愛に溢れた生き物である

 

しかし、力も強く俊敏であり

鋭い爪と牙を持つばかりに

突然の出会い、不幸な出会いによって

人を攻撃してしまい、重大な事故になる事もある

 

 

県内でも昨年から4件の人身事故があるが

うち1件は、山間部で散歩中の人が親子熊に襲われたケース

これは、親子熊に人の存在を知らせる事が出来ず

熊の方もその存在を人に知らせる事もなく

うっかり鉢合わせしたケースだ

不慮の事故と言う外はないが

山間部とはいえ、人が常に活動する別荘地・ペンション村であるから

オレの中には、また別角度から検証しなければならない問題もあると思っている

 

 

そして、その他3件のケース

 

オレは事故ではない

事故として扱われてはいるが

その被害者は全て猟友会・駆除員であり

全て駆除作業中の事故である

本来、避けられる事故であり、経験や認識の甘さが事故に繋がったと考えている

 

この事について、近隣の猟友会の重鎮であり本物の熊撃ちと話をした事があるが

その人の考えも、オレと全く同じであった

 

つまり、経験不足

そして、銃は持ってるが熊撃ちではないという事

 

駆除と称して、クマに接する機会が増える駆除業務だが

もともと、クマの駆除は檻での駆除が捕獲数の90%を超える

クマ檻での捕獲は、野山を歩き回る猟に比べると

その難易度と言ったら、月とスッポンほどの差があるのだ

 

つまり、クマだけを狙い、それを野山で銃で仕留める業というのは

そりゃ普通の猟師の中じゃ自慢したくなるほどの難しい作業

一生に一度有るか無いかの話であり

そもそも、銃を持つハンターが生きてるうちにできん人の方が多数である

 

しかし、賛否あると思うが

檻でクマを捕まえるのには

それに耐える設備があれば、誰だって獲れる

 

だって、自分が寝てる間に、クマが勝手に歩いてきて自分で罠に入ってくれる

蜂蜜やらクマの大好物を入れて置けば

まあ、出そうな場所に持って行って置いておけば

2~3日で簡単に入ってしまう

 

ここに、クマの行動や習性などの深い知識は必要ないのである

 

俺んちみたいな山間部の田舎で

クマが生息していて、時々畑のものを荒らすような地域であれば

誰が仕掛けた檻だって、余程下手くそじゃなければ入っちゃうのだ

 

こういう事だから、駆除に携わればクマに接する機会も増える

 

そして、檻や罠に囲われたクマを仕留めるのは容易である

退路のない、攻撃のオプションのない檻のクマ

 

銃があれば確実に仕留められる

イメージ 2

 

しかし、それを持って

そんな経験をして

己がクマ猟師になったと思うのは稚拙なのである

 

クマの力や動きは

私たちが想像する以上に強く早い

 

檻のクマを経験したとしても

その知識と経験だけでは

山の熊猟師にはなれないのである

 

どれ程多くのクマを檻で捕獲し経験を積んだとしても

その猟師、駆除者は野山でクマが木に登るのさえ見た事が無いだろう

檻に入ってるクマしか見た事が無い・・・そう言う訳だ

 

檻の入り口が西向きか東向きかあるいは南向きか

そんな事も関係ない

 

何処をどう歩き、檻の向きがどっちでないと入らないなんて事が分かってりゃ

山でクマがどう歩くか分かるのと同じ事だから

もし本当なら、山でクマなんぞ簡単に獲れる猟師であるはずだが・・

そんな人見た事ないわ(笑)

 

クマが猫の様な速さで木に登る事を知ってる人

見た事ある人だってそうそう居ないはずだよ

あんなでかい動物だからゆっくり登ると思いきや・・・

豹が木に登るみたいに早いのだから驚きだ

 

 

まあ、経験が浅く、危険を予見できない者が

こういう事に従事すると前出の様な事故に繋がるものであるし

経験を積んだ者だとしても油断すれば危険な事になる

 

クマの駆除は駆除隊が行っているものだし

その駆除隊には猟友会の責任ある立場の人が推薦している訳だし

その最高責任者は県猟友会の親分という事になるのだが

 

一年間に連続して3回も人身事故があるとなると

ちょっと問題であり、その任命権者としての責任の自覚が求められるな

普通の会社なら、労災事故という事でエライ事になるだろうし

責任者の首だって危うい

 

 

 

 

オレは今は駆除隊にも入っていないし

猟友会にも属さない

 

もちろん、これまで檻でクマを捕まえようなんて思った事もない

 

 

ほぼほぼクマを専門に狩る猟師である

 

つまり、熊撃ちという訳だ

 

イメージ 3

 

足と通った月日と歩く距離、時々出会う動物やクマが

オレの先生だ

 

山の中に動物が歩く道があり

色んな動物たちが交錯する

 

何処をどう歩けばどこに抜けるのか

どの獣道があの尾根に一番近く時間がかからないで行けるのか

 

長い年月歩き回る事でそれを自然からの知識として授かる

 

それしか彼らを知る教材が無いのである

 

 

そんな中

 

野山を歩くクマを探し出し、追いかけ

厳しい山の中で仕留める

 

年に1度か2度しかない機会に

ただ1発か2発の弾丸しか発する事しか出来ない

 

クマは1発で落とせ

その為に数多くの練習を重ね

弾の吟味を重ね

自身を持って引き金を引ける技量を身につけろ

 

オレは後輩にそう言って聞かせる

 

年に何度も挑戦できる狙撃ではない

オレは、毎年何度か機会があるが、それでも多くて5~6回

少ない年は1度だけという事もあったが

それを外せばそれで終わりなのである

その年の次の機会はないと思うのが正解だ

 

だから、神がかった狙撃が求められる

 

条件の悪い地形や地理、天候

そんな中でも、ただ1発の弾丸を彼らの元に送り届け

引導を渡すのである

 

ただ1発にかけるからこそ

苦しませずそれを行う事が大切な事

 

下手に狙い、クマだけを撃つ事に捕われると

彼らは内臓が飛び出しても逃げていく

 

無駄に苦しませ、野垂れ死にをさせる事になる

 

だから、1発で仕留めなければならないのだ

少なくとも、1発でダメな時でも確実に短時間で彼らを仕留めるのが

熊撃ちとしての責任であると思いたい

 

イメージ 4

 

 

いう事は簡単だ

 

だが、やってのけなければ熊撃ちではない

 

 

オレは熊が可愛くてたまらない

あの愛らしい足

 

自分の子供と重なってしまい

いつも捕まえるたびに激しい罪悪感と悲しみに打たれる

 

そして、そんな悲しみを感じるからこそ

生き延びて欲しいとも思う

 

生き延びる事が出来ず俺たちの手に落ちたなら

その命や、それを育んだ自然、山々、木々に深い感謝を思うのである

 

 

イメージ 5
 

大きな躯を俺たちは引き出す

汗を流し引き出す

 

そんな事は当然の事だ

 

稀有な命を奪う訳だから

 

 

その代償として俺たちの汗や思いしか捧げられないじゃないか

 

 

200キロ近いでかい奴を

的確な方法とロープワークで引き出す

 

 

これは、仲間が怪我をして動けなくなった時にも役立つ手段だし

搬出する経路も、エスケープルート、最短距離で楽なコースを選ぶ

こんな事を知識として持つことも欠かせない事だ

 

 

 

全て備え

仲間を無事家に帰す事

 

 

それが熊撃ちの最大の責務であると思う

 

 

 

山からあふれ出て里に出るクマを檻で獲る

そう言う事も大事ではないとは言わないが

 

激しい労力を伴う山でのクマ猟や駆除

これをもっと充実してはどうかとオレは思う

 

出て来たものは山が許容できないものと考えれば

里でいくら檻で獲っても、それは尽きない

 

無駄に命の数を数えるだけの事に終始する

里で獲るのは簡単だが

簡単な事を受け入れて満足するだけでは問題の解決に繋がっていない

 

 

山で猟を出来る猟師を育て

大切にして

その知識や技術、伝統などを守れなくちゃいけないと思う

 

 

山で猟が出来ない人は、趣味の狩猟に特化すればいい

駆除なんて出来る奴がやるのが一番効率が良いのだから

 

 

それが誰なのか・・・

 

 

そう言う事は、結果を見れば一目瞭然としている

 

 

被害農家から見れば

駆除とは、猟師の自慢話でも何でもなくそんな事は関係ない

 

被害が出なくなりゃそれでいい訳だ

 

 

誰が獲ろうが構わないが

 

ブドウやリンゴを喰った後に熊を捕まえて

有難うございます じゃない

 

喰う前に出て来なきゃ一番いい

 

 

奴らだって、人の怖さを知れば

それなりに里への出没も慎重になるのだが・・・・

 

 

 

 

まあ、オレはそう思って熊撃ちをやっている

 

 

 

 

 

 

 

 

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2018.05.08:N,Takanoo:[鉄砲撃ち]

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