ハモコミ通信2023年10月号

  • ハモコミ通信2023年10月号

生活に取り入れたり、仕事で生かすなどしていただけると本望です。


 

◎サイゼリヤ飛躍の原点にある母の教え 正垣泰彦 サイゼリヤ会長

1967年、大学在学中の21歳の時に千葉県市川市で洋食屋を始めたわけですけど、当初は食べ物屋なんてやりたいとも何とも思わなかった。

たまたまアルバイトをしていた飲食店のコック長から、「おまえ、食べ物屋をやってみないか。向いてるぞ」と言われたのがきっかけです。

サイゼリヤと共に生きてきた半世紀を振り返ると、これはエネルギーの仕業だなと思っています。

エネルギーがよりよい調和のためにこういう環境をつくってくれたんだなと。好きとか嫌いとかは関係なくて、好きでも嫌いでも、いまやっていることが最高なんです。

いまある環境も、共に働いてくれているスタッフたちも、日常に起こる様々な現象も、すべて最高なんです。これ以上のものはない。そう思えるかどうか。

よく若い人が 「自分の好きなことをやりたい」 とかって言いますけど、それは自分中心に考えているだけだから、うまくいかない。

皆に喜んでもらいたいとか困っている人を幸せにしてあげたいとか世の中を変えたいとか、自分の利益じゃなくて誰かの役に立つことを優先して考えると、結果は良くなるんです。

かく言う私も店を始めたばかりの頃は欲の塊(かたまり)ですから、楽をしてお金をたくさん儲けたいと思っていました。

しかし、来る日も来る日もとにかくお客さんが全然入らない。一日の来店客が6人だけということもありました。

当時の店は2階にあって、1階には八百屋さんとアサリ屋さんが入っていました。

狭くて見えにくい階段を上がっていかなきゃいけないのに、階段の入り口に荷物が置いてあるから飛び越えたりどかしたりしないと通れない。

深夜に店を開ければ集客できるだろうと営業時間を朝4時まで延ばしたところ、ならず者のたまり場になっただけ。

揚げ句の果てには客同士の喧嘩で石油ストーブが倒れ、店は燃えてしまったんです。

開店から1年9カ月後のことでした。

立地は悪いしならず者しか来ないし、火事にはなるし・・・こんな店でいくらおいしいものを出してもお客さんは絶対に来ないと思っていました。

店を辞めることも考えましたし、再開するにしても別の場所でやろうと。

ところが、ある時おふくろにこう言われたんです。

「火事に遭ったあの店はお前にとって最高の場所だから、辞めちゃダメ。八百屋もアサリ屋も、せっかくおまえのためにそこにあるんだから、逃げちゃダメ。もう一度同じところで頑張りなさい」って。

お客さんが来ないことを立地のせいにしないで、お客さんが来てくれるようにひたむきに努力することが大切なんだと、おふくろは教えてくれました。

だから、立地が悪いのもならず者しか来ないのも火事になったのも、すべてエネルギーの仕業で、より幸せになるようにやってくれていたことに気づかされたんですね。

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<コメント>

まず、お母様、すごいですね。

失意の息子に対して 「逃げるな、もう一度同じ場所でやれ」 ですもの。ものごとの本質を見抜いているからこそ言える愛のムチです。

自分の息子に対して、「八百屋もアサリ屋も、せっかくおまえのためにそこにある」って言えるかなぁ?

お母様の真意をしっかりと感じ取り、素直に聴いて実行した若き正垣会長もまたすごい! まあ、こういうお母様に育てられたからこそ、素地が備わっていたのでしょう。

若い頃は、うまくいかない原因を外部要因のせいにしたくなるのはよくわかります。今でもそうですもの(笑)。

火事をきっかけに、悪条件のせいにするのではなく、ひたむきに本筋を歩んでこられたのですね。

原点を大切にしてきた半世紀をふり返り、今に至っていることをなにがしかの 「エネルギーの仕業」 と達観。その上で現況を全肯定できるのは、素晴らしいことですね。

サイゼリアさん。ただ安いだけの店、という勝手な色眼鏡で見ており、まったく利用してませんでした。反省です。


 

2023.09.30:壱岐産業:[事務局ノート]