今月も、「まちネタ」(街で見つけたコラムに潜むコミュニケーションのネタ)をお楽しみください。
◎忘れられない言葉
F氏には、30数年経った今も大事にしている言葉があります。
それは、あるセミナーの講師から教えられた言葉で、「志は高く、頭は低く、実践は足元から」というものです。
「人間は、どのような生き方をするかが大事である。
人生には確かな生きる指針が必要である」という、講師の強い言葉が今も耳に残っています。
「志」とは、心の指す方向であり、理想や目標のことです。
「頭は低く」とは、心の姿勢であり、何事も謙虚な心を持って臨むことが大切だという意味です。わからないことは「どうか教えてください」とへりくだって他人(ひと)に聞く姿勢です。
F氏は、自分のことよりも他人のことを先にする、自利より利他を図る生き方を目標にしています。
この言葉に出会ったF氏は、明るい挨拶と返事、後始末という身近なことにも率先して取り組んできました。
これからも、この言葉を人生の指針として生きていこうと決意しています。
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<コメント>
志という言葉の響きが好きです。理想や目標のこと、となっていますが、志のほうが強い意志が感じられますし、その人の心が澄んでいる印象です。
私もハモコミづくりとその広がりを志し、泥臭い地道なことの積み重ねを繰り返し繰り返しやっています。一生道半ば(笑)。やりがい満点です。
曹洞宗道元禅師の言葉に「自未得度先度他(じみとくどせんどた)の心を発すべし」というものがあります。
『自らは未だ得ていなくても、まず先に他に得させてあげる』という意味のようで、聖書の「与えよ、さらば与えられん」と同じ意味で、本文と重なります。
争いは、我利我利亡者(がりがりもうじゃ=自分過剰優先者)になるところから生じているのは明らか。
今の世相を象徴している気がします。
◎吸い殻に感謝
30歳で念願の飲食店をオープンし、市内にも5店舗を有していたA氏。しかし、全国展開の大型レストランが進出したため、瞬く間に業績は悪化しました。
1店舗に縮小したのち、多額の借金を抱えての再出発となったのです。
A氏はこのことによって、自身の至らなさに気づきました。順調な業績に有頂天になり、贅沢(ぜいたく)をし過ぎていたこと、従業員への配慮が足りなかったこと、店の管理を疎(おろそ)かにしていたこと、儲かって当たり前と思っていたことなどです。
こうした反省を踏まえ、A氏は早朝に、店舗の駐車場の清掃を始めました。すると、捨てられた吸い殻が目に留まりました。
以前のA氏は、《 こんな所に捨てるなんて 》と腹を立て、従業員に命令口調で掃除を指示していたのです。
ところが今は、「捨てられた吸い殻の数だけ、お客様が来てくださったのだ」と逆に吸い殻が愛おしく思えるのです。
A氏は毎日、駐車場の塵(ちり)を拾い、率先して店の掃除も行いました。その後、従業員や顧客の信頼が回復し、店の経営は徐々によくなっています。
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<コメント>
A氏が再出発に際して自らを大いに反省したことは、吸い殻を愛おしく思える心に集約されていますね。
心が変われば物事に対する見方、感じ方が変わり、それが言動を変えて結果につながっていくのですね。
このコラムに出合ったこと自体、意味のあることと捉えると、慢心を戒め、誰のおかげで今があるかについて、時間をとって心静かに振り返る必要を感じます。
さっそくやります!