今月も、「まちネタ」(街で見つけたコラムに潜むコミュニケーションのネタ)をお楽しみください。
◎とっくりセーター
あるデパートでの微笑(ほほえ)ましいエピソードです。
70代くらいの女性が「うちのお父ちゃんに、とっくりセーターが欲しいんだけど、どこにある?」と店員に尋ねました。
若い店員は「タートルネックのセーターですね」と返事をしています。
そこに、ベテランの店員が間に入り、「とっくりセーターでございますね。どうぞこちらです」と案内に立ちました。
そして、「とっくりセーターは暖かいから、ご主人様も喜ばれるでしょう」と、最後まで「とっくりセーター」とお客様に合わせていました。
ベテラン店員は、正しい呼び方より、相手に合わせる方を選んで接客したのでした。
きっとその女性も、気持ちよく買い物をすることができたでしょう。
私たちも、時と場合に応じて、相手に合わせる配慮をしたいものです。
ちなみに「とっくりセーター」とは、日本酒などを入れる徳利に形が似ていることから、かつて呼ばれていた呼び方です。
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<コメント>
この通信でも紹介したことのある私の体験です。
仙台空港の機内預け荷物をX線に通すところに並んでいた時のこと。係の人が並んでいる人に「ANAですか?」と質問しています。20代か30代くらいの青年が「ハイ」と答えます。
次の青年にも、「お客様はANAですか?」と質問、私の番にきたら、「お客様は全日空ですか?」 「は、はい(苦笑)」
そして、私の後ろの青年には、「ANAですか?」でした。相手に合わせてるんだろうねぇ・・・(笑)。
本論に戻ると、確かにお客様の使っている言葉で話す、お客様に合わせる、っていうのは基本ですね。やっているつもりですが、改めて注意したいと思いました。
それにしても、とっくりセーターという呼び方を、わざわざこのように説明しないと理解されない時代になってしまったんですね。かなり、やっぱり私は全日空チームかなぁ(笑)。
◎先輩の「どや顔」
「人の振り見て、我が振り直せ」という諺(ことわざ)があります。
これは、「他人の行動を見て、良いところは見習って自分に取り入れる。反対に、他人の悪いところは、自分にも同様のところはないかと振り返って、もしあれば改めて、自己の向上につなげよ」という教訓です。
A子さんは、職場に、頼りにしている先輩がいます。その先輩は、社歴が長く、仕事もできる人です。
当初は何かにつけて教えてもらっていましたが、次第に教えてもらうことが嫌になってきました。
そのわけは、先輩の「どや顔」です。いかにも《私は何でも知っている》というような得意顔が気になって仕方ありません。
A子さんは、そんな先輩の姿から、謙虚でありたいという思いを強くしました。
そして、自分にも高慢な気持ちがないか、態度に現れていないかと省(かえり)みて、誰に対しても謙虚であることを心がけるようになったのです。
A子さんの振る舞いに感化されたのか、その先輩の態度も変わっていきました。
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<コメント>
謙虚の反対は傲慢(ごうまん)でしょうか。もっとも慎みたい心持ちですね。
誰しも自慢したい気持ちはあるでしょうが、故・船井幸雄氏によると、自慢を喜んで聞いてくれるのは母親だけだ、ということです。そう考えると、母親は偉大ですね。
故・無能唱元氏は、飲み屋で自慢話をしたいなら、勘定はみんなの分をおごれ、そうしないと人間関係をダメにするぞ、とおっしゃっていました。
このコラムの中でとても大切な部分は最後の行ではないかと思います。特別先輩に何か言わずとも、人の振り見て我が振りを直した時、相手が自然に変わった、という経験、ありませんか?