今月も、「まちネタ」(街で見つけたコラムに潜むコミュニケーションのネタ)をお楽しみください。
◎ 時を待つ
スピード化の時代では、わけもなく先を急いでしまう人も少なくありません。
たとえば、エレベーターに乗り込んで、行き先階のボタンを押すと同時に、無意識のうちに「閉じる」のボタンを押していることもその一つでしょう。
なかには、すぐにドアが閉まらないことに苛(いら)立って、何度も「閉じる」ボタンを押してしまうこともあります。
一般に、エレベーターのドアが自然に閉まるまでの時間は、四秒ほどだそうです。
ノートルダム清心学園理事長の渡辺和子さんは、ある時、この四秒さえ待てない自分に気がついて、深く考えさせられたと、著書の中で述べています。
「『四秒すら待てない私』でいいのだろうかと。事の重大さに気付いた私は、その日から、一人で乗っている時は『待つ』決心を立てたのです。この決心は少しずつですが、『他の物事も待てる私』に変えてゆきました」
そして、この待ち時間は、渡辺さんにとって、学生や苦しむ人たちのために祈る時間となったといいます。
待つことの大切さをあかしてくれる話です。
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<コメント>
人は7つのことを欲している、ということを感性論哲学の芳村思風先生から学びました。
・わかってほしい ・認めてほしい ・好きになってほしい ・許してほしい ・ほめてほしい ・信じてほしい ・待ってほしい
やはりありました、「待つ」ということ。
コンビニのレジは待たせないことがウリ。それがあたり前の社会の中で、私たちは少しずつ「待てない人」になってしまい、「待ってほしい」という普遍的ニーズに応えられない習慣を知らず知らず構築してしまっています。
小さな決心(この場合はエレベーターの4秒待ち)が、他の場面にも波及しているという点、学び実践したいところですね。
◎ 電話口のあくび
ある日、Yさんは取引先から、問い合わせの電話を受けました。
「いつもお世話になります」と挨拶を交わした後、受話器の向こうで相手があくびをした様子がうかがえました。
《 仕事の最中にあくびをするなんて!》と、Yさんは腹立たしい気持ちになり、その後の会話に真心を持って、接することができませんでした。
しかしその後、わが職場のフロア全体を見回すと、電話対応が必ずしもよいとはいえません。
Yさんは、自分自身、何気なく行っている電話の応対で、相手に不快な思いをさせたことはなかったかと振り返りました。
すると、話を早く進めようとして、相手の言葉をきちんと受け止めないまま、いい加減な返事をしていたことに気づいたのです。
電話では、お互いに顔は見えていなくても、印象はしっかり残ります。何か他のことをしながら電話に出ている状況も、受話器越しに、案外伝わるものです。
《 適度な緊張感を持って、電話対応をしよう 》と、心新たにしたYさんです。
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<コメント>
Yさんは、相手のあくびをきっかけとして、自分にはそういう悪い面はないだろうか、と深く考えたところがすばらしいですね。相手を責めておしまい、というのが普通です。
しかも、自分の職場のまずい点に気づいたことにとどまらず、自分自身の電話の応対のクセを見事に発見しました。
自分のクセを自分で見つけられる人はそうそういないと思います。よほど注意深くふり返ることをしない限り。
そういう点では、忌憚(きたん)のない意見を言ってくれそうな人に頼んで、教えてもらうといいかもしれません。
熊本、大分で続いている余震。1000回超とは想像を絶します。
少しでも早く、日常が取り戻せますようお祈りしています。エクアドル、ネパールの方々も大変な思いをされていることでしょう。こちらも一日も早く心安らかに過ごせるようになってほしいですね。
巨大な竜巻や大地震、大型台風なども、巨大な地球にとっては些細な変化。その表面で生かされていることに感謝です。