これは、まなびピア2014宮城大会の参加事業として、
倫理研究所が東北放送とタイアップしてラジオ放送したものです。
全30話のうち、私的に選りすぐった3話をお届けします。
今週は、その2として表題のお話をお届けします。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
慣れない新天地での生活に疲れ、夫の両親とうまくやっていけず、
新婚早々度重なる夫婦喧嘩に嫌気がさし、家を飛び出したことがありました。
遠い実家に帰るつもりで乗った電車の中で、
《 どうして夫はわかってくれないの? どうして姑は辛くあたるの?》
と思い返して、つい声をあげて泣いてしまったのです。
しばらくすると、「どうしたの?」と声をかけられました。
涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げると、白髪のお婆さんが
心配そうに覗き込んでいました。
私は突然泣き出し迷惑をかけたことをお詫びしました。
「いいのよ気にしないで、それより何があったの?」
とさらに訊かれ、私は新婚生活での姑の意地悪や夫とのすれ違い、
無理解に苦しんでいることを伝えました。
近所の人なら外聞もあって、しづらい話も、
通りすがりの人ということで全部吐き出しました。
そんな話を、おばあさんは私を責めることなく聞いてくれました。
そしておばあさんは言ってくれました。
「大変だったわね。苦しかったわね。でも夫にも事情があるの。
私の夫も仕事人間で家庭にあんまり見向きもしなかったわ。
姑にはひどいことを言われたりしたもの。
だけど、ときには私の作ったお味噌汁がすごくおいしいって
褒めてくれたりしたし、姑は、後日ひどいことを言ってごめんなさいね、
前から謝らなきゃと思ってたんだけどって言ってくれたわ。
だから今だけにとらわれちゃダメなのよ。
ささいな幸せを積み重ねていくのよ」
ってアドバイスをくれたのです。
《 私って不幸だわ、家族のせいよ 》 とずっと思っていた私は、
反省と感謝の気持ちでまた泣いてしまいました。
「ありがとうございます」とお礼を言うと、
「気にしないで、あなたもがんばってね」と声をかけてもらいました。
私は鉄道で乗ってきた線路を戻って行きました。
それからは、感謝を胸に小さな幸せを探しながら生きるようになり、
夫や姑の言動で傷ついたりしなくなりました。
あのとき、おばあさんに会っていなかったら今ごろどうなっていたことでしょう。
あれっきり会っていないので直接は伝えられませんが、
この場をお借りしてお礼を言わせてください。
あのときはどうもありがとうございました。