今月も、「まちネタ」(街で見つけたコラムに潜むコミュニケーションのネタ)をお楽しみください。
◎ 言葉遣いで失敗
言葉は生き物です。
発した言葉一つで、相手の気持ちを良くすることもあれば、『言刃』というように、悪くする力もあります。
会社員のA君に彼女ができました。ある日、交際相手のS子さんを待っていると、バイクに乗った中年男性が現われ、「ここの場所は○○か」と尋ねられました。
その男性の言い方が高圧的に聞こえたので、A君は思わずムッとしました。
「いくら僕が若いからって、そんな言葉遣いはないでしょう」と言い返したため、二人の間に険悪なムードが漂い始めました。
その時、S子さんがやって来ました。第一声は、「お父さん、忘れ物持ってきてくれたの」でした。中年男性は、S子さんのお父さんだったのです。
A君は慌ててその場を取り繕(つくろ)ってはみたものの、後味の悪さがいつまでも残り、結局、二人は破局してしまいました。
人が生活する上で、話をしたり聞いたりする割合は、存外に大きいものです。人間関係を円滑にするために、会話は大事な鍵を握っています。
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<コメント>
このお話は、言葉遣いの問題でもありますが、刺激と反応の問題でもありますね。
外部からのマイナス刺激(この場合は中年男性の高圧的なものの言い方)に対してどう反応するか、という問題ととらえることができると思います。
これは事前に想定しておくと、それなりに対応ができるものです。アンガーマネジメントという言葉を聞いたことがあるでしょうか? 怒りというのは第二感情、と言われており、コントロールできる、という考え方です。
おそらく一番難しいのは、家族間でのマイナス刺激(女房殿の嫌味など)に対する反応ではないでしょうか? 何しろ家族は遠慮がありませんからストレートに矢が降りかかってきます。大きな課題ですね(笑)。
◎ 書類づくりの勘所
ビジネス文書は、伝えるべき内容を、簡潔かつ明瞭に記す必要があります。そのためには、読み手への心配りが欠かせません。
Sさんは、書類の作成を終え、上司に確認をお願いしました。上司からは「この書類は以前も見た。最初からやり直せ」と、作り直しを命じられました。
しかし、その書類は初めて見せたものでした。納得がいかないSさんは、「いいえ、この書類は先ほど完成したばかりです」と食ってかかりました。
すると、「君の作る書類は、いつも形式的で心がない。お客様のことを思えば、もう少し相手に応じた書類の作成ができるはずだ」と叱責(しっせき)されたのです。
自分の書類を改めて読み返してみると、書体や文体はいつも同じで、挨拶文さえ同じ文面です。
毎回、同じデータを少しだけ変えて、時間を短縮することばかり考えていたことに気づきました。
受け渡す相手や伝えるべき内容を鑑みて、書類を作り直したSさん。上司は、「書類は相手に手紙を書くような気持ちで作りなさい」と微笑んだのでした。
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<コメント>
Sさんは、上司からの叱責に素直に反応し、自らを変える努力をすぐに実行したようですね。
しかも文面からすると、その場限りの対処ではなく、取り組みの姿勢そのものについての改善の様子。
上司としては、以前から気になっていたこのことを、すぐには指摘せず何度か目をつぶり、タイミングを計って伝えた様子がうかがえます。
このあたりを間違えると伝わるものも伝わらなくなってしまいますね。相手のせいにすることは簡単ですが、上司のほうが経験豊かなわけで、そういう配慮をしてしかるべきことでしょう。
そういう意味ではまだまだ修行中だなぁ、と改めて感じさせられたコラムでした。