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魔法の言葉 「これがよい」 昭和編
これは、ある家庭の実話である。
半年くらい前、ある事情から家屋敷を他人に譲って、その十分の一にも足らぬ狭苦しい一隅に押し込められてしまった、十人に近い家族。
その時はさすがの豪放な主人も、明朗な夫人も、快活な家人たちも、全く悲しみに閉ざされた。
かくして幾日かのもだえの後、ふとしたことから「これがよいのだ」と思い至った主人は、一家の人達にこれを語った。
皆よく納得して、これから先々、「・・・がよい」ということを、家族の標語にしようと約束した。
それからである。「お米がない」と母さんが言い出すと、「がよいのですよ」と娘さんが言う。「部屋が窮屈で困るね」とでも、ついうっかり主人が言い出すと、「がよいんでしょう」と坊ちゃんが言う。
去る年の二度の大患の後、ご主人のおなかには、いまだに胆石の固まりが残っていた。
いつとはなしに思い出してさすりながら、「まだ固まりがとれぬ」と独り言のようにいう。
そばにいた奥さんが、「がよいのでございましょう」と。さっそく一本まいって、「ハハハ!」と笑い出す。いつの間にか固まりがとれてしまった。
こうして一家は、日に月に明るくなった。家の中の細かいこと、食物のこと、来客のこと、そして、いろいろの外のことまで皆、順調にすらすらと運んでいった。(中略)
「百難に効果てきめんの“がよい”の標語を、私の一家で独占するのは、もったいないようです」と、にこにこしながら夫人は語った。
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「これがよい」という言葉の威力もさることながら、この文から想像できる昭和初期と思われる頃の家族のあり方を感じてもらおうと思って紹介しました。
使われている言葉もとても上品で気持ちがいいですね。
6つの感性 「機能よりデザイン」
今の消費者は、電話(機能)そのものと同じくらいの費用を、携帯電話の装飾品(デザイン)にかけているそうです。全米で着信音の年間売上40億ドルっていうのも驚きです。
トースターが1日に稼働する時間はたったの1%(実用性)、99%はそこに存在している時間です(有意性)。そのことに気づきはじめた消費者は、機能だけじゃなくデザインのよいトースターを求めているわけです。もちろん家電全般に言えることですね。
私の仕事でも、デザインの良いモノが理屈を飛び越えて受け入れられる事例をたくさん見てきました。でも6つの感性で言っていることはそんな程度のことではなさそうです。
「デザイナーになることは、変化を生み出す主体者になることです」とは、フィラデルフィアの建築デザイン学校B.C.アレン氏の言葉。とても広い概念ですね。
そして、誰でも広義のデザイナーになり得るわけで、そこを目指していきたいと思いました。