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先入観 その1
あたり前のことですが、人は100人いれば100通り、1000人いれば1000通りの人格があるものです。
しかし、便宜上パターンとして認識しておくと楽なので、そうすることが多いですね。
例えば、日本人は生真面目だ、とか、ラテン系の人は陽気だ、とか、女は泣き虫だ、とか、近頃の若者は携帯電話ばっかり覗いている、などなど。
確かにそういう人が多いのかもしれませんが、実際にはそうでない人も多いわけです。先入観或いは偏見という色眼鏡によって、真実を曲げて勝手に解釈してしまうことがあり、注意したいものです。
先日、自分の先入観に気づかされたことがあったので、皆さんにも一緒に考えてみていただければと思ったのでした。
こんな話です。
ラテン系A国人労働者を雇うM県の某工場が閉鎖となった。仕事を失ったA国の人たちの大半が派遣会社の斡旋もあり、隣県の工場に突然勤めることになった。その数は家族も含めて約500人。そのため、ある集合アパートでは、40世帯のうち14世帯がA国人となった。もちろん彼らは家族と一緒に暮らしている。A国の人達が住み始めて1ヶ月もたたないうちに自治会長さんのところには次々と苦情が届くようになった。
さて、ここで問題です。
以下の苦情は、日本人からのものと、A国人からのものが混ざっています。どれがどちらからのかを当ててみてください。
① 雪かきをしない
② タイヤを駐輪場に置きっぱなしにしている
③ 夜遅くまで外で声高に話をしている
④ ゴミ出しのルールを守らない
⑤ カーステレオの音がうるさい
⑥ アパートの自治会費を払わない
⑦ タバコのポイ捨てをする
⑧ 踊り場におもちゃを放置している
⑨ 月1度の清掃に参加しない
⑩ 出会っても挨拶しない
本当は「素」の状態で考えていただくほうが面白い結果になると思うのですが、今回はすでにタイトルで、そして前置きで先入観について語ってしまいました。
さて、解答を見てみましょう。
日本人からの苦情 ②③⑤⑥
A国人からの苦情 ①⑦⑧⑨
双方からの苦情 ④⑩
いかがでしたか?
そんなはずはない、などとお感じになりませんでしたか? でもこれが事実なのです。
ちなみに私は⑧⑩だけがA国人から、と思いました。
冷静に考えてみると、「雪かきをしない」「掃除をしない」「自治会費を払わない」などというのは、
日本全国どこのアパートや町内会でも頻繁に問題になっていることですよね。
文化の違いを感じるのは③と⑤くらいのもので、あとはどちらでも起こりうることだなぁ、と改めて気づかされました。
A国人のほうが、むしろコミュニティ意識が強く、その自治は、お金というよりは労働でまかなうという習慣があるのかもしれませんね。
いずれにしても、これはたまたまそこにいた人達の事例であるに過ぎず、一部を見て全部を判断することの危険性も感じました。
先入観で勘違い、という程度ならいいのですが、それが偏見になってしまうとこわいなぁ、と改めて感じました。ニュートラルな感覚を持ち続けたいものです。
今回は、偏見につながる先入観の怖さ、という視点で先入観について考えてみましたが、次回では、発想の柔軟性という点からとらえてみたいと思います。
人びとの先入観を突き崩すところに、商品として、或いは広告宣伝として、驚きと魅力が生まれる、といったあたりのことです。乞うご期待。