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▼強いとしより

もう3年前のこと。

会社の役員の一人Hが、インフルエンザをこじらせて肺炎になったことがあった。
本来なら入院して治療しなければならない程だったが、病室の空きがなく、しばらく薬をもらって家から通院していた。
5日も家にいることが続くと退屈になってきて、まだ顔色も青ざめていたが出社し始めた。
木曜日、金曜日と会社に出て、土曜日曜の休みをはさんで月曜日に出て来たときには、周りの者にも回復の兆しがはっきりと分かった。

それから2日後、外に昼食をとりに出掛けたH役員が、会社にもどって食後服用の薬を飲もうとしていた。
薬袋を見て、「ありゃりゃりゃりゃりゃー」と奇声を発し、顔を引きつらせている。
どうしたんですか、と何人かの社員が周りに集まると、黙って薬袋を差し出した。
見ると袋には、薬の説明が次のように書いてあった。

******錠  うつ病 尿失禁 の薬
******錠  前立腺肥大 の薬
何処で誰がまちがったのか、H役員は肺炎治療とはまったく関係のない薬をのんでいたわけだ。

怒り、恐怖、、動揺、さまざまな感情の嵐に襲われて、H役員の顔色は赤くなったり青くなったりいそがしかった。
周りに集まった者もひとしきりざわめいていたが、社員の一人が
「しかし、こんな肺炎と関係ない薬をのんでいても、しっかり治られるんだから、H役員はほんとに体が丈夫なんですね」と奇妙に感じ入った。
すると皆もそれに同調して、いやいやH役員は間違った薬にも負けない丈夫な体で、大したものだということになった。
感情的に混乱した辛い場面だったが、そんな風にほめられてしまったH役員は、周りの者に怒ることもならず、「いやあ、えへへへへ」などと、ただ苦笑をしていたのだった。

画像 ( )
2006.04.04:higetono

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