ボク ト オレ

大きさ交差点ですれ違ったその人は懐かしい香りがした


あの娘の香りだ



少し背伸びする年頃のボクらは本やTVなんかで紹介されたものに興味があった。



今日はあの娘が来る。


さて部屋をキレイにしなければ。



早速ボクは雑誌を手にする。雑誌にはこう書かれていた。


”甘い香りと甘い音楽でムードをだそう”


ムードなんて考えたこともないボクは必死になりながらとりあえず身の回りをかたづけ、それから部屋のムードをと考えた。

もともとボクは物がそんなにない。しかし、本がたくさんある。本といえば聞こえはいいが、大抵は漫画か雑誌だった。なので、本をどこかにやればボクの部屋片付けは終了した。


今度はムード作りか・・・
甘い香り?・・・


音楽はビートルズしか聴いていなかったので悩まなかったが、香りとなるとどうしたらよいのかわからなくなった・・・


”ピンポーン”


あ、来ちゃった・・・
香りはあきらめよう。ボクは所詮、ムード作りなんか無理だったのだな。


自分で自分をなぐさめながら玄関に向かうと待ち望んでいたあの娘が笑顔で立っていた。


舞い上がっていたボクは何を話したのかすら覚えていない。おそらく、自分のことばかり話したのだろう。

気が付くともうあの娘が帰る時間となった。


じゃぁまたね


そう言うとまたあのかわいい笑顔をボクに向けてくれた。
ボクはひとり残された気分であの娘がいた、自分の部屋にトボトボと戻った。


ん?あれ?この香り・・・あの娘の・・・・




いまでも似た香りがすると振り返ってしまう。

ボクにとっての思い出の香り・・・
2005.03.05:gas:[メモ/小説?]