カシラーナカ

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 心肺蘇生法などの応急手当の講習を何回か受けたことがある。確か「ヒッ、ヒッ、フゥー…」だったっけ?

 幸運にも、まだ実際に応急手当が必要な場面に遭遇したことはないが、もしもそんな事態になったらかなり動揺するに違いない。本当に心臓が停止した人間を見たら、私なんかビックリして心臓が止まってしまうだろう。誰か助けてー!

 やはり人形で練習するのと、生身の人間を相手にしたのとでは全然勝手が違うと思う。
 練習も生身でしなければ。
 もちろん相手の女性は私の方で指名させていただく。指名料って取られますか?

 …っつーか、練習用の人形に「ナミエちゃん」と書いてあるのを発見。男所帯の消防組織の寂しさを垣間見て、なんか居たたまれない気持ちになってしまったのは私だけではあるまい…。

 私が班長になって初の消防団活動が、この1週間実施する「警鐘打鳴」。なんと読むのかよく分からないが、たぶん「けいしょううちならし」と読むのだろう。ようするに春の防災週間にちなみ、半鐘を叩いて火災予防を警告する防災活動のことで、我が班では朝晩2回ずつ班員全員が交替でこれにあたっている。

 そして今朝の当番が私だった。班長がサボってしまってはアレなんで、目覚まし5コ位セットしてやっとの思いで6時前に起床した。実は今日は私の誕生日。何が悲しくて自分の誕生日に朝こっ早く年寄りみたいに目を覚ましてカネ叩きせにゃいかんのだ…などと半分夢の中で思いつつ、半鐘のあるポンプ庫に夢遊病者のようにたどり着いた。せっかくの誕生日なので、年の数だけ鐘を叩いてやろうかとも思ったが、30回を越えたところでだんだん悲しくなり、やめた…。なんか自分の人生に警鐘を打ち鳴らしている気がしてきたのは気のせいではないと思う。

 でも真面目に誕生日の日ぐらい、何か良いことがないものだろうか。例えば、私が鐘を叩いていると、近所のマンションに住むきれいなおねえさんが「おかげで目が覚めたわ。ありがとう。私、低血圧で朝に弱くて…。明日から毎朝部屋までモーニングコールしに来てね」なんていうシチュエーションがあったりする…わけないですよね。ありえねえっつーの。百八つの鐘で煩悩吹き飛ばしてきま〜す。ではまた来年!良いお年を…
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 先々週の早朝、消防団の我が部の部長が自宅にいらっしゃって、1枚の紙を私に渡していかれた。紙には「幹部会のご案内」と書かれてある。キター!召集令状、赤紙だ。私が班長になって初めての幹部会。案内の最後にはご丁寧に「新任の班長は必ず出席のこと」と脅迫めいた注意書きまで記されている。

 幹部会…。それは弱肉強食の消防団組織の中、死屍累々を踏み越えて幹部まで駆け上がってきたツワモノどもが阿鼻叫喚の地獄絵図を繰り広げる戒厳令の下、徹底的な思想弾圧が行なわれ、腐った精神、怠惰な日常、優柔不断な性格や弱い心を完膚なきまで叩きのめして排除する、恐怖政治にも似た究極の秘密集会…と私は思い込んでいる。私のようなリアルのび太君は真っ先に抹殺されるに違いない。ガクガク、ブルブル…。

 実際、以前に誰かから「幹部会に初めて出た人は、日本酒をバケツでイッキ飲みするのが消防団の伝統」と確かに聞いた覚えがある。ただでさえ消防団は明確な命令系統の上に厳格な縦社会を確立している。その中枢をなす幹部会では何をかいわんや、糞をしろと言われたら捻り出さなければならないし、糞を食えと言われたら必ず手洗いをしてから「いただきます」を言わなければならないのだ。あぁ…。

 そんな絶望的な気持ちで迎えた昨日、ついに幹部会開催当日がやってきた。

 …っつーか、いたって普通の穏やかな会議と懇親会でした。よかったよかった。そういえば、「日本酒をバケツでイッキ…」と私に教えた人は、確か酒屋さんだったような…。
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