信州の漬物・おやつ・郷土料理 240品
吉田文子:文・写真 (川辺書林 2002年1月8日初版発行)
田舎のおばちゃん(おばあちゃん)はお茶のみ(茶のみ話し)が大好きである。
もちろん、街中に住むおばあちゃんだっておばちゃんもそうなのだろうけれども、それが、米沢という田舎にあっても街中と農山村ではちょっと違いがあったりして面白い。
この本の著者は、信州で出会ったばあちゃんたちの、茶のみの様子とお茶うけに興味を持って、人を介して多くの人のお茶うけを見て、写真と作り方、その人たちのエピソードを紹介している。
内陸で深い山が多い信州のお茶うけ文化と、こちら米沢の田沢あたりのそれとはどこか似ているような気がしてとても興味深い。
私は、他所のお宅に伺って、お茶をいただきながらお話しするという機会が多い。多いというより、おおかたそういう時間なのですね。
こちらでは、「お茶おき」と、なまりなのか方言なのかよく解らないが、そういう。
通常、お盆の上にお茶うけとして「お菓子」「漬物」「煮物」が鉢に盛られてセットされる。
普段の日常と、来客がある場合などで、内容や品数は違ってくるものの、揃えてある。
お客さまによっては、もう一品増えたり、銘々皿に個別のお菓子を用意されることもある。
常平生は、お盆に取り箸ついていて、それで手に取ってとか小皿などがあればそれにとって食す。
このお茶うけの習慣がない所からきた、若い人やおっさんが、いきなりとり箸で自分の口に運ぶなんてこともあったりして魂消ることもあるのだが。
関東近辺や東京などに行って暮してみると、お盆にお茶うけセットしてあるのは、ほとんど見たことがない。
たいてい、銘々に盛られて用意されているものだ。
さて、著者と私は同い年である。
料理教室の講師をしているだけあって、細かく取材して、おばあちゃんたちの昔から伝わる得意のお茶うけ、或いは最近はやりのものも紹介されている。
私も食いしん坊である。
あちらこちらの家で用意してくださるお茶うけを、食べずにはいられないのですね。
特に漬物や山菜やその季節の野菜を使った煮物など、どうしても手が出る。
その家その家で味付けも異なり、我が家と同じような味つけに出会ったりするとホッとするし、こんなふうにするといいのかというのもあって、感動である。
仕事がら法事の時、お茶を飲む時間があって、田舎の方ではおばあちゃんがいると8~9割方のところで寒天がお茶うけに出る。
私は、これに手を出さずにはおられない。
食べて美味い!という以外に、いろいろ言うものだから、寒天評論家というあだ名までいただいてしまった。
だいぶ山の方のお宅で、自分の所で生ったクルミで寄せた寒天を出してくださるお宅がある。
クルミの量が半端でなく多く、荒っぽく刻んだものを入れてあるのだけれど、口触りと固さも絶妙で、もう最高なのだ。
パクパク食べる姿がよほど美味そうで嬉しそうだったのだろう、それ以来そのお宅に行く度に「クルミ寒天、作ってたからな!」と言われて、ご馳走になって来る。
田舎のお茶うけ文化は、なかなか奥深くて素敵なものだと思う。
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