年だからでなく年がいもなく
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弧舟
集英社 渡部淳一
企業などで定年後のセカンドライフプランの講師役を務めるときに家族関係の見直しと再構築について話す
特に夫婦関係についてはできるだけ具体的に話すようにしている
「粗大ごみ」から始まって「産業廃棄物」「あなたの存在そのものがストレス」など、すでに巷に出回っているフレーズを出すと失笑めいた笑いがわきあがる
現役中と同じような考え方と態度で奥さんと接することなく、一度リセットしてやってみたらどうでしょう
そのためにはまず自分の生きがいを持つことが大事です、などとしたり顔に話している
この本はあるサラリーマンが定年後、子供や奥さんとうまくいかなくなりもがきながらも再生の道を見出そうとする姿を描いた小説である
主人公は、現役時代は大手広告会社の重役までやったエリートサリーマンであり、定年までは家庭生活も表面的には波風なく過ごしてきた
それが退職して家で24時間暮らすようになると予想していなかった問題に直面し孤独に陥る
奥さんは家を飛び出した娘を頼って家出をしてしまう
書かれて内容は、すでに言い古されているようなこと
新鮮味はなく感動もしない
主婦の立場からすでに多くの本で述べられている
奥さんの家出については「夫よ!あなたがいちばんストレスです」(村越克子)のなかで『自チューのわがまま夫には「プチ家出」でのお仕置きが案外、効果的ですよ』と紹介されている
意外性を感じたのは奥さんにプチ家出をされた主人公が孤独の解消のために選んだ解決法が「デートクラブ」の活用であるということ
会費を払い、現役の女子社員と食事のデートから始まり、奥さんがいない自宅まで招くところまでいく
このような方法で孤独を解消しようと試みる男性はいるのだろうか
「デートクラブ」なるものが世の中に存在しているとすれば、需要があるということであるが、定年後奥さんとうまくいかなくなったからといって、若い女性を求めてデートするという熟男の気持ちを理解するのは難しい
熟年男の孤独解消の光を見出したような書き方であるがいただけない
そんな方法しか思いつかない作者の意図がわからない
かえって孤独感を深めるのではなかろうか
渡辺淳一氏は「ある年齢にならないと書けない小説がある。この小説がそうである」というようなことをテレビかなんかで話していた
定年後の夫婦関係についてある程度の情報を入手している読者にしてみればもうすでに言いつくされ、書きつくされた内容のような気もする
読む側の文学的素養を別にすれば感動するという内容ではないとも思うのである
2011.01.12:
choro
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