年だからでなく年がいもなく
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映画「かくも長き不在」
暇になったらゆっくり観ようと溜め込んだビデオがまだ70本以上残っている
そのなかに「かくも長き不在」というビデオがあった
1961年製作のフランス映画で、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した作品である
初めて観たのは大学時代であるがその後何度となく観ている
その都度に感慨を新たにする映画である
第2次世界大戦で夫が帰ってこないままパリ郊外でカフェを営む40歳くらいの女店主
そのカフェの近くに、16年前にゲシュタポに連れ去られた夫とそっくりの一人の男が現れる
その男は外套を身にまとい、歌を口ずさみながら決まったコースを歩く
昔の生活を匂わせるような品の良さを漂わせながら歩いているが、男は記憶を失ったホームレスなのだ
女店主はもしかして夫ではないかと思い、叔母などの親族にも見てもらって真否の確認を試みるが、親族は断定できなかった
そんななか、女店主は次第に夫と思い込むようになっていく
そしてそのホームレスの男を自宅に招いて二人だけで食事をする機会を作る
食事をし、音楽を聞き、ダンスをする
その間、女店主は夫との接点を探り出そうとしていろいろなことを試みるが、夫かどうか分からないままで別れのときを迎える
最後に店を出て行こうとする男の後姿に向かって女店主は夫の名前を大声で叫ぶ
事情を知った近所の人たちも名前を呼んでくれる
すると男は走り来るトラックのライトの前で両手をあげて立ち止まったのだ
その男には、前から来るトラックのライトはゲシュタポのサーチライトとして映り、後ろから名前を呼ぶ声は、ゲシュタポの声になって聞こえているのだろうか
単調なストーリーであるが夫を想い激しく揺れ動く女性の心と戦争がもたらす残酷さを声高でなくじっくりと描き出す
女店主を演じる女優の演技と表情が印象的である。一度観たら忘れられない
悲しみを訴える大きな目が、観る人に夫を想う女の心を焼き付ける
この映画を観ていて思いだした
私が小学生のころ同じ町内をこの映画のホームレスのような格好をした一人の男が歩いていたことを
いつも決まった外套のような服を着てかばんを提げて歩いていた
その男も普通の人とは違って、記憶を失っているかのような歩き方であり表情であった
その男の家族が同じ町内に住んでいるたという記憶もうっすらと残っている
奥さんが裁縫を教えながら男と女の子どもを養っている家族であった
その男がその家族の夫であったかどうかの真偽のほどは定かでない
なぜそのように記憶しているのか今となっては良く分からないが、小学生の低学年が勝手に想像できるような筋書きではないような気がする
近所の大人の噂話を聞いていたのかもしれない
2010.08.12:
choro
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