年だからでなく年がいもなく
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がん哲学外来の話―6
9・『人生の重荷として背負うべき「罪悪感」』
なぜ自分はがんになったのか。がんになった患者さんはその理由を知ろうとします。そして原因を自分の中に探そうとして、自分を責める。これが罪悪感です
そういうとき、患者さんには「仕方ない」といいます。「事実を事実として、ありのままに受け入れて、自分の荷物として背負って生きていくしかない」とはっきり言います。なぜならそれは、自分にしか背負えない荷物だからです
ちゃんと背負って生きていくと、荷物を下ろすときが必ず来ます。あるいは不思議に分け持ってくれる人間が出てくるものです。自分が背負わなければ、下ろすことも、分け持ってくれる人が現れることもないのです
だから「目下の急務は忍耐あるのみ」です。悪いことは長続きしないものです
▲自分なりにがんになった原因を見つけるために関連図をつくってみる
自分なりに思い当たる節を見つけることができる。それを改めるか、取り除けばいい
罪悪感に悩むよりも「がんは自分が作ったもの、だから自分で治せる」という考え方で臨む
10・「人間は自ら変わらなければならない」
病気になったのは「自分」なのです。自分の人生に起きた自分の問題であり、それは自分で受け入れるしかない。自分にしか解決できない問題なのです。厳しいことを言うようですが、そこが抜けてしまうと、自分自身を苦しめることになります
自分の問題を自分の問題として解決していくとき、人は自ら変わろうとします
それは勇気のいる困難の大きい闘いです。しかしがん治療という、厳しく険しい道を進むには「人間は自ら変わらなければならない」という決意で行っていただきたい。それは必ずや自分を支える杖となり、軸となるからです
▲がんの根本的治療は「哲学する」ことではないか
がんになって人生に限りがあることを知らされたときに、自分はどう反応できるかが問われる
自分と残された人生について考えることができる「機会」であると受け止めて自分と言う人間に真摯に対峙していきたいもの
11・『がんは「人間力」を鍛えるチャンス』
がんという病になる、それは間違いなく「人生の特異点」であり、「不連続点」である
人生には出会いや大きな体験(特異点)を通過することで、精神的に大きく飛躍するときがあります
これが「不連続点」です
がん闘病と言うマイナスな状況にあるとき、問われるのは自分の人間性であり、人間力だからです。弱った時ほど人とのつながり、その力を借りることは大切です
人間は試練を迎えたときほどその人間性が露になる。気持ちに余裕がなくなるからです。深刻な状況になったときに自分がどういう態度をとるか、それは周囲の人たちの反応が教えてくれます
誰かがきちんと指摘してくれたらいいのですが、病人に対してはやはり遠慮してしまいます。言いにくいことを言ってくれる人というのは、いそうでいないのです
だから自分で気づいて学んでいくしかない
自分を育てるにはやはり人間を学ぶことです。あらゆるものから人間を学ぶことはできますが、私自身の経験では、やはり良い本のとのであいだと思います
大切なことは、そういう時間を与えられたということです。自分が欲しくて「作った時間」ではない、がんになったことで「与えられた時間」です
出会いは本だけではありません。もし「この人は人間として立派だなあ」と思える人がいたら、その人から学ぶ。声をかけて話してみる、観察してみるのもいいでしょう
がんも人間も、大成するまでは長い年月がかかります。いくつもの不連続点を通過しながら、そのたびに視界が変わり、開けていく。
自らを鍛え育て上げていく。それこそ「勇ましき高尚なる生涯」です。がんになってもならなくても、治っても治らなくても、生涯をかけて取り組む価値のある大仕事ではないでしょうか
▲がんになることによってがんになる前よりも人間的に成長できる、深い幸せ感を得ることができる、
いい家族関係を作ることができる、というチャンスが与えられる
そういう思いでがんを背負って淡々と生きていきたいものである
2009.03.31:
choro
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