年だからでなく年がいもなく
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がん哲学外来の話―5
7・「自分と他人を比べると、ますます不幸になる」
「他人と比べることはない。人間の存在価値は等しく同じです」と言ったところで、そんなことは患者さん自身もよくわかっている。頭では分かっていることを具象化したイメージで考えるためには、生命現象を見るほうがいいのです。心臓は心臓の、大腸は大腸の、肝臓は肝臓の、それぞれ能力も役割も違います。でもすべてがひとつの体なのです
しかもミクロの世界には悩みがありません。比較という概念がないからです
すべての存在が認められていて、それぞれが自分のなすべきことを淡々としている。そうすることで完全に調和し、ひとつの営みをしている
これはあなた自身の話であり、私たち人間の話なのです
▲戦後豊かな社会を目指すなかで、「比較の幸せ感」という価値観に縛り付けられてきた
「隣の車は大きく見えます」は車のキャッチフレーズ。大きなことはいいことだと言う価値観まで刷り込まされてきた
▲比較の幸せ感から、勝ち組、負け組という格差意識を生み、広まってしまった
▲ 「世界でただひとつだけの花」で「ナンバーワンでなくオンリーワン」と歌ったが、ここいらで「自分は自分」と言う意識に立ち返りたいもの
▲がんは自分は自分という意識に立ち返らせてくれる良ききっかけかもしれない
8・『病床にいる自分に与えられた「なすべきこと」』
健康で何事も起きていないときは、「やらねばならないこと」に追われます。
病気になるとそれが逆転します。毎日していた「やらねばならないこと」は減り、むしろ「なすべきこと」が気になってくる。とくにがんという生死に関わる病気ほどそうなります
病床にいるとき、多くの患者さんは「思い出す」という作業をしています
思い出したり考えたりしていると、不思議と現在の自分の問題に立ち向かう勇気が出てくるのです。思い出すという行為は、複雑に絡み合った脳のネットワークをほぐしてくれるのかもしれません
たいていは「人間関係」を思い出す。自分の心の中に思っていたことを思い出す。そしてそれを果たすことが自分の「なすべきこと」として気になってきます
がん闘病にあるときも、人間関係の和解はとても重要です。自分を赦し相手を赦すことで、背負ってきた重荷を下ろせる。「癒し」と言う言葉が流行語のように使われていますが、人間が本当に癒されるのは、何かを心から赦せたときに起こるものです
▲がんと言われてなぜ頭の中が真っ白になるのか、余命○○と言われてなぜ落ち込むのか
「死の恐怖」ということが最大の要因と思うが、「なすべきこと」が分かっていないからということも要因ではないだろうか
あるいは「やらねばならない」ことと「なすべきこと」との切り替えについて、考えていないからということもあるのではないだろうか
人生には限りがあるということを忘れながら、生きている
▲ 今生きている延長線でしか自分の人生を考えていないのであれば、がんでなくても、自分の「なすべきこと」について考えてみたほうがいいということ
▲『病床患者は「人間関係を思い出し、自分を赦し相手を赦す」ことで癒される』、というのは至言
キャリア形成のスタートは「自己理解」である
手法の1つとして自己分析の「振り返り、棚卸」の作業を行う
生まれたときから現在までの自分の人生を振り返り、振り返り表に記入していく
そのとき「肯定的に、自分を認める、誉めるような視点で・・」などとアドバイスする
それは「自分を赦す」ということに通ずるのではないか
「自分を赦せる人が相手を赦せる」ということではなかろうか
▲きっちりと「振り返り」をした人は新たな自分を発見して将来に向かって進んでいける
自分史を書き上げた人は元気になって前へ進んでいけるという
2009.03.28:
choro
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