choro note

▼映画「海炭市叙景」

今年度のキネマ旬報ベストテン邦画の部で9位に入った映画である
情報不足もあったが11月に上映れた時には関心がなく見過ごしてしまった
その映画が今回1月22日より再上映された

「海炭市」というのは海と炭鉱に囲まれた街ということで「函館」の街が舞台
不遇の作家と言われる函館出身の佐藤泰志という作家の小説の映画化である

物語は幼くして親を亡くした兄妹が造船所の閉鎖で職を失って迎えた正月、地域開発のために住居の立ち退きを迫られる老婆、ガス会社を経営している社長の家族、折り合いが悪くて帰郷しても父親に会おうとしない息子、などの物語が淡々とオムニバス形式に描かれていく
描かれる物語は特別な物語ではなく、自分の物語とも思えるような身近な問題ばかりである


それらの物語は函館の街を舞台にし、函館の人々の生活の中に溶け込みながら切なく、美しく描かれる
「叙景」とは国語辞典をひくと「けしきを詩や文章などにあらわすこと」とある
佐藤泰志氏の小説の世界を独特の魅力をもつ函館の景色を借りてあらわしたともいえる
(小学館文庫から出版)

不思議な感動を覚える映画である
生きていることが息苦しくも感じる
だからこそ生きているということは素晴らしいことなんだ、とも感じる
腹の中に涙が滴り落ちるような感じなのである

観ながらポーランドの監督の作品「デカローグ」を思い出す
「デカローグ」も日常の家族の身近な物語を10話にしてまとめて作られ、高く評価された作品である

この映画は観る人によって賛否がわかれそうな気がする
「暗い話でストーリー性もなく面白くもない」という思う人も多いかもしれない

平日の昼であったが観客はほぼ満員であった
2時間30分の映画が終わってもすぐに立ちあがるお客はいなかった
予期しなかった衝撃を感じたからではないだろうか

この種の映画が好きな人には是非、とお勧めしたいが、苦手な人には話題にもできないような気がしている
女房は「いい映画だった」と言ってくれた

2011.01.29:choro
[2011.02.02]
ああ函館… (こもれび)

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