choro note

▼映画「阿弥陀堂だより」

亡くなられた北林 谷栄さんを偲んで、「阿弥陀堂だより」がNHKハイビジョンで放映された

北林 谷栄さんといえば、「ビルマのたて琴」でのビルマ人のおばあちゃんに扮した役が印象に残る

「阿弥陀堂だより」の96歳といううめおばあさん役もすばらしい
役を演じているのか、地でいっているのか定かでないくらいにうめおばあさんを演じ切っている
淡々と語るうめおばあさんの語りのなかに96年生きてきた人の珠玉の言葉を見出す

「阿弥陀堂だより」は平成14年の作品であるが、何度見ても感動を新たにする

作家志望の旦那と医師の妻が主人公のようであるが、うめばあさんや「阿弥陀堂だより」を書いている若い娘や胃がんを患っている先生も主人公のように思える

今回は特に胃がんになって死を迎える先生の生き様、死に様が胸を打つ
自分ががんを患っているからだろうか
身の回りのことをそぎ落として、悠々と死を迎える様子は真似したくともまねできない
でも真似してみたいと思わせる
先生が身近に感じられてならない

景色が素晴らしい
人間が人間らしく豊かに生きるためには周りを囲む豊かな自然が必要であることを感じさせる
阿弥陀堂や先生の自宅の部屋から見渡せる木立や田園と山々の姿
朝焼け夕焼け
春夏秋冬の四季の織り成す景色の移り変わり
景色の映像を見ているだけで豊かな気持ちになる

夫婦の姿が美しい
多くを語るわけでもないが、ただ寄り添うだけで通じ合う
そんな夫婦になってみたいものでる

原作は以前ブログにも書いたが医師であり作家である南木 桂士
病院勤務中にうつになりその体験を基にしてこの小説を書いたといわれている

南木 桂士を分解すれば、この映画の妻である医師と旦那である作家の2人になるわけである

何度見ても飽きない映画
今回は夕暮れ時、遊び疲れた子供達が家路を急ぐ姿を見送る夫婦の目に涙が浮かびあがるシーンが印象的であった
さりげない日常生活のなかでの一つひとつの場面が「有難いこと」なのだ
そんな気持ちにさせられた
一緒に見ていた女房はいつのまにかテッシュのくずの山を作っていた


「おくりびと」が死者への畏敬の念から、「阿弥陀どうだより」は今を生きている人々の姿から観る人に勇気を与えてくれる映画ではないだろうか

日本人としての生き方、日本人としての死生観について考えさせてくれる映画である
私にとっては「おくりびと」よりも「阿弥陀堂だより」のほうが生きる勇気をもらえる映画である

2010.05.19:choro

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