choro note
▼映画「パンドラの匣」
学生のころ太宰にはまり込んだ
「パンドラの匣」は昭和20年に河北新報に連載された小説
終戦間際に1人の少年が結核を患いその療養のために「健康道場」という隔離された療養所で患者や看護士たちと繰り広げる物語である
療養所の助手(看護士)が「やっとるか」というと塾生(患者)は「やっとるぞ」と答える。さらに「がんばれよ」といわれれば「よしきた」と答えるのである
不思議な世界のなかで営まれる塾生と助手の恋にまつわるさまざまな想い、塾生の死、塾生同士の葛藤などがファンタスチックに描かれていく
「パンドラの匣」はギリシャ神話の一つであるが、不幸を撒き散らした匣のすみに残された小石に「希望」という字が書かれていたという
終戦まもない混沌とした時に、結核を患った人々とスタッフが「生きることへの希望」を求める人々の物語ともいえる
少年は「新しい男」に生まれ変わることを目指して療養生活をしている
だから映画は青春ものともいえるポジティブ物語ともいえる
ファンタジックに描かれているので楽しい気分、甘酸っぱい気分にさせてくれる
新鮮さを味わえる映画でもある
キャストが新鮮である
主人公の少年(ひばり)にオーデションで合格した16歳の染谷将太を軸にしてマア坊役の仲里衣沙と竹さん役の川上未映子などである
女性の魅力を引き出しているともいえる
川上は2008年の芥川賞受賞作家でありミュージシャンでもある
初めての映画出演であるが独自の存在感を示している
仲の明るく妖精的な天然ものともいえる演技にはひきつけられる
助手の制服はこの映画のためにデザインしたそうであるが、モンペ姿や着物姿も新鮮に映る
なぜかしら画面にはいつくばって廊下を拭く川上の大きなお尻が2回も映し出されそれが妙に印象に残る
宮城県南三陸でロケし、仙台で全国を先駆けて上映された映画
女房は原作を意識したのか「少し難しかった」というが原作を意識して難しく観ることもないだろう
「今」身の回りにおきている出来事が、不思議な世界の場面を借りて語りかけてくれていると思えばいいのではないか
2009.10.29:choro
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