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生きる道

 主人が半年前決断しなければならなかった事・・・それは残りの時間の使い方
 生きるために・・・数字はないと言われるほど厳しい命がけの治療を選ぶのか・・
 家族との時間を作るために・・・緩和ケアに移行し、死を待つのか・・・

 43歳、小学生の娘二人の父親である主人は、もちろん、生きるための治療を選びました。
 
 2009年12月3日・・・一ヶ月後に始まる命がけの治療に臨む前の覚悟を綴っていました。


 
 俺は今、ベッドにいる。
雪も桜も海も紅葉も感じずに初めて過ごした。季節を体感したかった。
俺はどこに向かって進んでいるのだろう。
もちろん、それは生きる道…

俺は今、ベッドにいる。
妻、子供、両親が心を支えてくれた。こんなに家族愛を感じたことはなかった。
俺はどこに向かって進んでいるのだろう。
もちろん、家族と暮らす道…

俺は今、ベッドにいる。
子供たちから電話やメールが来る。声と文章で成長を感じ、自分の糧になる。
俺はどこに向かって進んでいるのだろう。
もちろん、子供の笑顔を感じる道…

俺は今、ベッドにいる。
頭の中を仕事が駆け巡り、職場に電話する。俺にはやりたいことが残っている。
俺はどこに向かって進んでいるのだろう。
もちろん、仕事へ復活する道…

俺は今、ベッドにいる。
遠い田舎から来る妻との面会は一番の薬だ。声と笑顔が心を和らげてくれる。
俺はどこに向かって進んでいるのだろう。
もちろん、妻と楽しく過ごす道…

現実に直面して・・・

 主人が亡くなって、二週間がすぎ、現実を見つめなければならない時期にきました。

 私一人だったら、たいして悩むこともありませんが・・・・

 小1と小3の娘達の笑顔を守るために、大事な決断・覚悟が必要なとき・・・。


 結婚してからの12年ほど、主人の両親と一緒に暮らしてきました。主人が入院中の1年3ヶ月もずっと一緒に。主人が亡くなった今となっては・・・主人の両親がどんなに人格者であっても、私は、所詮・・・嫁。(所詮・・・嫁←この気持ちは嫁いだ方なら誰もが感じる事ではないかと思います)

 私は今30代後半。人生80年とするならば・・・主人の死と主人の両親をこれから先ずっと背負っていくのは、非常に・・・重過ぎます。

 二週間前までは、主人が元気になって一緒に暮らすことしか考えていなかったため、主人が亡くなった時の準備など・・・何一つ出来ていないのが現実。

 でも、だからこそ最後まで笑って、いい時間を過ごす事が出来たのも事実。

 これから、たくさんの現実に直面しながら、乗り越えていかなければならない事が、たくさんあるのでしょう。でも、それは、生きてる限り誰もが同じ。

昨日、友人から届いたメッセージ・・・

 "ゆっくりとゆっくりと現実に逆らわず一歩といわず半歩ずつでも良い・・・少しずつ前に歩んでいかれる事を心からお祈り申し上げます"


現実に逆らわず・・・・心に響きました。

最高の医療

 私の父はT病院に、主人が亡くなる数分前に初めて来て、主人を一緒に看取りました。

 その後、故郷から迎えの車が到着するまでの4時間ほど、主人の傍で一人待つから、私と子供たちには、先に帰って休むようにと言ってくれました。

 後になって、父が
 「正直・・・夜の霊安室で一人、何時間もどうして過ごそうかと不安だった。しかし、看護士の皆さんが、4時間もの間、絶え間なくお焼香に来てくれた。この看護士さん達の姿勢で、今日までどんな医療を受けてきたのか全て分かった気がする。本当に素晴らしい病院だ」と・・・感無量で話してくれました。

 私達遺族の誰もが、最高の医療を受けられたと感じている事が、今、最高に幸せです。

涙・・・

 数日前・・・娘が呟きました。

 「看護士さんは、人の死になれてるのかなぁ・・・」

 なんで?と尋ねると

 「だって、お父さんが亡くなったとき、看護士さん泣かなかったもん」

 「どうかなぁ・・・」と私は答えました。

 でもね、昨日、病院に行って答えが見つかりました。


 娘には、こう伝えました。

 「お母さん病院に行って、看護士さんとお父さんのこと話してたら、看護士さんの目から涙がこぼれるの見ちゃった。お父さんが亡くなって家族が悲しんでいるとき、看護士さんが泣かなかったのは、プロとして仕事をきちんとしなければならなかったからじゃないかな・・・?生きる事を一生懸命応援してくれる看護士さんが、"死に慣れる"なんて事・・・お母さんはないと思うなぁ・・・」

 そこでまた娘が呟いた・・・

 「前にテレビで、お母さんと同じようなこと言ってるのを聞いた事ある!」
 

 「・・・・・・・」
 私は言葉を失いました。

 

笑顔で退院できる病院

 T病院のスタッフの皆様に最後のご挨拶を終え、今帰りの新幹線です。

 以前、主人の隣に入院されていた方が、「この病院は、笑顔で退院できる病院だから・・・」と紹介されて転院されてきた事を話してくださいました。
 退院の形は違うものとなってしまいましたが、主人も私も娘たちも、間違いなく笑顔で退院できたと思っています。

 
 発病してから・・・勝つためには、まず敵をよく知らなければならないと思い、この病気の事をたくさん勉強しました。数々の闘病記を読み、ネットを利用していろいろ調べたり、医師用の診療マニュアルまで読みました。更にたくさんの方々から情報を頂きました事、この場をお借りして御礼申し上げます。


 これからは、微力ながら病と闘っている方々のお役に立てればと考えております。どうぞお気軽にお声掛け頂ければ幸いです。