ダリア acocotlis note

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第十五章 ダーリヤの切花向栽培法
 切花としてダーリヤを栽培し成功している者、また失敗している者があります。成功や失敗にはそれぞれの原因が考えられます。以下、切花向きのダーリヤ栽培法について述べることとします。
 切花栽培には品種を限定しなくてはなりません。種々雑多の種類を作っていっては経営が成り立ちません。それではいかなる種類を作れば良いのでしょう。先ず、花色の美麗なこと、花の大きなこと(ポンポン、コラレット等にあっては花の愛らしきこと)、花首の強いこと、性質が頑丈なこと、多花性なこと、これらの条件を備えねばなりません。いたずらに品評会向きの不経済的なダーリヤを切花向きとして作っても利益になりません。
 花色は赤・白・黄・桃・絞り・二色・雅色の七通りとします。赤・白・桃を最も多くし雅色を最も少なくする。特別の場合、白ばかり栽培している者もありますが、普通は赤・白・桃の三者を多く植えます。なお、球根代が安いからとてつまらぬ種類のみ植えてはなりません。段々買い手の眼が肥えてつまらぬ花では需要が少なくなりました。
 今、左に切花用として代表的の花を掲げることとします。
  (以下中略)
 切花として栽培するには、球根販売と混合してはなりません。球根販売を主にすれば切り花は第二となり、切花を主とすれば球根は第二となります。どちらかを主目的として貫徹し一方を犠牲にしなければなりません。そうでなくては両者共成功しません。
また、切花として成功するには、地代の廉価な所でなくてはならず、地代が高くては到底算盤の持てるものではありません。そして、交通の便利な所で無くてはなりません。少なくても自転車で配達が出来て、または花屋から買出しに来られる場所で無くてはなりません。そして、なるべく同業者が近隣に在る方が良い。ただし大規模に栽培するならば同業者が無くても支障がありません。
 一反歩に植え付けるべき本数の多少が切花栽培には大きな関係があります。疎ら過ぎるよりは密に植えた方が宜しく、重要なことは一株を立派に作るのでは無く、一定面積より多数の花をかつ早く収穫する事にあります。早期の収穫には早く植え付けることはもとより、本数を多く植えなければなりません。これは一株より分枝する本数が無限では無いからです。また種類によって分枝の少ないものもあり、株数によって補わなければなりません。ある栽培家は一反歩千八百株を植え込み、ある栽培家は一ヶ所に二球ずつを少し隔てて植えることがありますが、いずれも株数を多くすることを目指した方法です。また、肥料は充分施し生長を促進させなければなりません。栄養不足あっては決して成功しません。
 早期出荷には、温室又はフレームを用いて発芽させる場合があり、降霜期が過ぎたならば圃場に植え出します。また、早出しの為に冬期間株を掘り上げず、畑などに据え置きにする人もあります。充分に土を掛けて置けば成功しますが、秋花の頃には樹勢が衰弱し思ったような収穫が望めないようです。また種玉を損失する可能性が高まりますので、やはり球根の植込みは一年限りとし、二年以上引き続き同一の株を据え置くことはやめましょう。
 切花栽培を行うには市場と連携・連絡を取らなければなりません。切り花は生物であることから、いたずらに沢山作っても売れなければ何もならないからです。さて、ダーリヤ栽培ではどれだけの利益を挙げ得るものでしょうか。これはその土地の状況により一概には言えませんが、東京などは今やダーリヤ需要が盛んになり、立派に切花専門栽培が可能となりました。東京地方を例に取り上げ、標準として計算してみますと次の様になります。
ダーリヤの切花相場は卸売で二銭を標準とします。もっとも六月中旬になれば八銭から十銭、七月盆前は五銭位なります。反面、八月には一銭位、九月〜十月には二銭より三銭位となります。しかし平均一銭五厘として計算しましょう。また、一株より得られる本数は土質、肥料、手入れ、植付け本数、風害、虫害の大小によって違い、またダーリヤの種類によっても違いますが、初め四枝を出し、次に十六枝を出し、更に三十二枚を出すと言う計算があるものの、この計算通りには行きませんから、一株二十本として計算しましょう。
 一反歩 千七百株  一株 二十枚
 この切花数 三万四千本  この代価 五百二千円(一本一銭五厘として)
 この外球根の利益は、一株三球を得るとし五千百球、この内千七百球は自家用とし、販売用三千四百球を一球五銭、百四十円となりますから、切花代を合計し六百六十円となります。最大で一反歩千円の利益を挙げることが可能です。  (※大正十二年の価格価値は現在の千五百〜二千分の一)


●2010.11.30
●tenjiku-b
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