ダリア acocotlis note

▼最新 ダーリヤ栽培法 K

第十三章 ダーリヤの名花
(以下省略)

第十四章 ダーリヤ繁殖法
    第一節 分  根
 ダーリヤの繁殖法には分根、挿し芽、接ぎ芽、播種の四方法があります。分根から述べましょう。
 ダーリヤの根はその一株を塊根と言い、それを切り放して一つ一つを球根と言います。ダーリヤの一株、即ち塊根には沢山の球根を有しますが、各球根は甘藷やじゃがいもの様に各所から芽を生ずるもので無く、茎に接したる首の所より外に芽がないため分根には充分な注意が必要です。
 ダーリヤは冬期間塊根の形で貯蔵し、春期発芽を催したる時に分根を始めます。分根には鋭利なナイフを用いて初めに塊根を二分し、次に一球ずつに分球します。
 球根の大きさはどんなものが良いかと言えば、先ず夏に作られた中球が一番良いでしょう。ダーリヤの塊根は大抵六〜七月と九〜十月の二回に成熟します。しかし、球根の大きさによって花の大きさや性質には関係しません。ある種類は非常に小さい塊根を生じ、またある種類は非常に大球を生ずる。小球だから悪いとは言えず、多くの場合は大球よりも結果の良い場合が多いものです。中小球はしばしば最も美しき最高級の花を咲かせます。球根に求められることは必ず強壮な一〜二芽を有する事であります。塊根でも鉢植え根でも挿し芽でも時としては、種子でもその結果は同じであります。それは大きさではなく注意深い手入れであり、特に栽培管理法はダーリヤ栽培の最も重要な点です。
 時として親根に沢山の芽が付く事がありますが、決して親根を植えてはいけません。親根を植えても中途で衰えて決して成功しません。なお親根の芽は挿し芽に用いることが可能です。
    第二節 挿し芽と接ぎ芽
 全て新しいものは勢力があると言うのが生物一般の原則です。故に古根よりも新根が良く、新根よりも挿し芽が良く、挿し芽よりも実生が良いと言う様な訳です。この意義に於いて挿し芽は最も重要な地位を占めるのです。
 挿し芽には二つの方法あります「切り挿し」と「掻き挿し」です。掻き挿しは一球(あるいは株)に二個以上の芽を持ったものや古球に沢山の芽を持った場合、その芽が二寸位になり葉がまだ広がらない時に、根の方から掻き取りそのまま挿す方法です。平鉢を用い土は塵芥の荒篩いが良い。その荒い土を鉢に入れて前の掻き芽を挿して置く、そして構わずに日向に出して置き、時々土が乾かぬ程度に水をやると日暖たりで早く発根します。発根したら別の鉢に植え付けて水肥をやり生育させます。五〜六寸伸びた時に花壇に植え込むと、球根で植えた場合と余り変らない日数で花を咲かせます。
 切り挿しはダーリヤ栽培にとって最も重要であります。ダーリヤの繁殖は大抵切り挿しによって行い、また植え込みの際も玄人仲間では大抵は切り挿し苗を用いています。切り挿しで繁殖する際にはなるべく小玉球を使います。特に前年五〜六月に鉢に挿した小玉を選びます。大玉はどうしても芽が太くなり挿し芽に不適当であるからです。
 日本には英国より毎年何種類と新種が輸入されますが、この新種はもちろん挿し芽球です。英国では繁殖には全て挿し芽を用い、その挿し芽も前年のポット球を用いて挿し芽を作ります。そして百本で幾らと言う相場が立つそうです。この新種は大抵十月から十一月に日本に到着し、到着すると直ちに繁殖に取り掛かり先ず四寸鉢位に植え込みます。十二月頃には芽が伸びて、三節位になった時に一節を残して切り取ります。一節も残さず切り取っても支障がありませんが大事を取って一節だけを残して切り取ります。その後、下から芽が出ますが先ず切り残した二節から出た芽は切り取ってしまって挿します。これで年内に三本の芽はもう穂を取っても良い位に伸長し、同時に元球から出た脇芽の二〜三球も一節残して切られる様になり、かくして三月頃までには一球から五十本以上の挿し芽が得られます。しかし三月では未だ季候が早過ぎて植え出すには適当にしませんので、穂先を切って休ませて置き、四月に入ってから大きな鉢に移し肥料を与えて生長させます。
 挿し木をそのまま生長させるには三月初旬頃からが宜しい。発根したら直ちに小鉢に取り、硝子に近い日の当たる所に置きます。鉢に根が一杯になったらこれより大鉢に肥料土で植え換えます。かくして六〜七寸の鉢に順次に植え換え、四月中旬になったら花壇に移すのです。注意点は鉢の根が一杯になってもほって置くと、茎がいじけてしまうことです。一旦いじけるといくら肥料をやってもその部分だけは太らず、従って良き花を開きません。
 以上は温室でありますが、床挿しをするには箱を作って下に石炭殻を入れ上に川砂を充たし、または一寸位の小鉢に砂を盛り床に入れます。この場合には床は石炭殻のみで宜しく、別に粘土を切口につける必要はありません。そして竈の上に置くのです。上はよしずなどを蔽って置くと早いものは一週間程で発根します。なお、生育が進み茎に穴のある芽は活着し難くなります。また、切る所は節の下三〜四分の所が発根し易くなります。余り下が長いと節が土上に現れ球にクラウンが出来ません。
 四月以後は温室には入れませんがフレームなどを用います。フレームが無ければ底無しの箱を使います。天気の日には上によしず掛け、遮光し小鉢は直ちに地上に置きます。雨に打たれない様にしなければなりません。四〜五月頃が最も活着が良く、この時に用いる土は砂よりも肥料分あるごみ土が良く、六〜七月には川砂が良い。なお七〜八月は暑くて活着が悪いので、なるべく林の様な冷涼な所に置きます。九月から十月にかけてはまた活着し易くなり、十月挿しは花が咲かないけれども根に子玉が出来るので来年の植え玉に使用できます。
 ダーリヤは接ぎ芽が出来ます。しかし挿し芽で充分なために接ぎ芽は余り用いません。しかし特別の場合用いる事があります。特別の場合とは種木の非常に少ない場合です。巧みな者はダーリヤの一芽あればこれから接ぎ芽によって繁殖します。方法は球根に接ぐのであり、球根の皮を剥いで芽を球根に直接付着させるために実に良く付きます。そしてこれを発芽生長させ、更に挿し芽を得る材料にするのです。なお、挿し芽を取ればこの接木の球根は役に立たないので棄てます。
    第三節 実生新種
 日本の気候はダーリヤに適していますから、実生による新種作りは実に面白いものがあります。日本では二度採種が可能です(暖地)。第一回は六月末からの採種です。この種子を播いて更に十一月に開花した例もあるようです。これは日本が実に天与の地で他国では見られないと言うことであり、英国辺で二年掛かる品種改良を日本では一年で行なうことも可能と言えます。
 しかし、何と言っても種子は秋になり一番出来易くなります。十月初めから十一月の降霜前の花が一番良く、薄い霜では余り影響しませんが、強い霜に当てると種子は出来ませんので、霜の心配のある時は軸を長く付け切り取り、逆さに懸垂して置くと種子が後熟します。
 ダーリヤの新種を作るには人工で理想的な媒助法を行うか、または媒助すべき両母本を隔離栽培して自然雑交を行うか、または沢山の種子を適宜に播いて沢山の実生の中から変種を発見するかです。しかしながら理想的な媒助法は容易ではありません。外国の新種でも後から推定的に母本の種類を定める事が往々あります。日本の実生は概して首が強く。外国の首の弱き種類も日本で栽培すると幾分か首が強くなります。これも日本の天恵の一つとでも言えましょう。
 明治四十四年の品評会に二つの実生が出て一等に入賞しました。一つは「国民」と名付けられ、今一つは「エビス」と名付けられました。「国民」はカクタスで鮭色に桃色を加味した優秀なものでありました。「エビス」はデコラチーブで純緋紅の大輪でありました。大正元年には別に新種が出ませんでしたが、大正二年になると実生新種が非常な勢いで出現しました。国民勧業部から出た「新高(カクタス、白色)」と「嵐山(カクタス、海老色)」が一等となり、二等にも多くの品種が上りました。今なお貴ばれている「陽明」はこの時の二等でした。それから徐々に品評会へ新種が出品され「半蔀」、「長春」、「北秀」、「黒鳳」、「漣・さざなみ」、「夢の跡」、「高御座・たかみくら」等の名花が出現しました。なお、その中から二〜三の系統を記して見ます。
  陽明(ようめい) 父・ガスターブドーゾン 母・キングエドワード
  半蔀(はしとみ) 父・不明 母・ドロシーハウス
  北秀(ほくしゅう) 父・ジャイガンチック 母・ピヤロット
  長春(ちょうしゅん) ワイヤットの子らしい
  秋光(しゅうこう) ハーリークラブトリー
  天寵(てんちょう) 陽明
  涼秋(りょうしゅう) ピヤロット
 (以下省略)


●2010.11.24
●tenjiku-b
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