ダリア acocotlis note

▼最新 ダーリヤ栽培法 B

第三章 ダーリヤの分類
 ダーリヤは植物学上キク科に属し、その品種は現在数千種ありますがこれは後に記すとして、これを先ず二に大別して重弁(ダブル)と単弁(シングル)とに区別致します。次に花の大きさ、形状、及び色の配合によって更に小分し、更に各品種に細分致します。
重弁ダーリヤはカクタス、デコラチーブ、ピオニー、ショウ(コロッサル及びファンシーを含む)及びポンポンに分類します。
一、カクタス咲ダーリヤ(狂い咲)は、比較的最新の作出にして他の品種と全くその型を異にして花弁の縁辺はことごとく外に向かって反転し、現今最も賞美されるもので菊形の狂い咲きと称して居ります。カクタス咲は更に三つに分類します。
 イ、内曲弁カクタス咲 溝形内曲弁を有す
   この種は溝形にして重ね多く、弁は長く狭く内曲または撚曲し花弁の長さの半分以上の筒状弁を有す
 ロ、直弁カクタス咲 溝形直弁を有す
 ハ、中間カクタス(ハイブリットカクタス)
   この種は広く真直のやや溝形にして尖りたる花弁を有し、重ね充分にして花弁の長さの半分より短き筒状弁を有す
ニ、デコラチーブ咲(菊咲)は、大にして扁たく中心まで充実して花心を現わさず、花弁は長く広く扁たく殆ど真直にして基脚部は筒状をなす。
三、ピオニー咲(芍薬咲)ダーリヤは、新型にして重ね少なく花心を現わし、筒状をなさず内弁は撚曲し外弁は扁平にして極めて雄大である。なお総じて茎丈が長い。このうち内弁の撚曲しない種類をダフレフクスと称して区別することがあります。
四、ショウ咲(大毬咲)は、重弁大輪にして筒状の花弁が集まり球形をなし、花心を現わさず花弁は正しく配列し、一花一色または花弁先端が基脚より濃厚なるものを言い、なお、花弁の基脚が先端よりも濃いもの、または絞りとなるものをファンシー咲と称し、またその絶大なるものをコロッサルと称することがあります。
五、ポンポン咲(毬咲)は、ショウ咲と同型なれどもただその形が小さく、花径二寸以内のもの、そして多種よりも矮性にして枝打ち多く花付きが多い。小さく円く細弁の整ったものが良い。

単弁ダーリヤは普通単弁(シングル)、コラレット及びアネモネ咲の三つです。
六、シングルは、一重のあっさりした花で大抵は八弁で、反曲せず大小も様々です。大形種はセンチュリーと称し、極端な矮性種はミグノン、星形種をスター、バラ形種をロセットと称されています。
七、コラレット咲は、シングルですが花心の周囲に花弁と同数の小弁(カラーと称す)を持ち、この小弁は花弁と色彩が違うものと同色のものがあります。
八、アネモネ咲は花心が小さき筒状弁を盛って居ります。

また、ダーリヤを実用的に分類し次の様にする事があります。これは米国の最新分類法です。
一、花壇用ダーリヤ
 単に花壇の美観を呈するもので切花や飾り花に適さないもの、花の集団性が主たる要求である。各個の花の完全さよりも花を沢山付ける事が注目される。
ニ、切花用ダーリヤ
 花を沢山付けること。しかし、その色彩茎の長さ及び形状に注目する。
三、飾り花ダーリヤ
 各花の発達と美麗さが注目される。しかし、集団性は必要ではない。
四、品評会用ダーリヤ
 それ自身花に属する全ての点に注目される。多花性または稀に茎も考慮される。

各分類の来歴を少し述べれば、カクタス咲は英国に於いて改良されたもので、英国種とも言われています。その極細弁にして或いは内曲しまたは撚曲し、色彩の美と形状の大きさと加え、非常に優美に出来上がり、ダーリヤの中では上品なものと言えましょう。しかしながら、この種は首が弱いと言う欠点が伴います。また、ダーリヤの葉が花の上品に伴わないことがあり、また、香気の悪しき等、改良の点がなお横たわっています。
ピオニー咲もまた比較的最新のダーリヤです。来歴を述べるもまたダーリヤ愛好家は興味を深くするでしょう。カクタスは大繁栄しましたが、その首が弱くて品評会用だけに供せられる事を嘆き、シングルダーリヤを改良しこれに優美な色彩と形状を与え、花壇用と切花用を兼備させると言う事が企図されました。この目的の為にシングルダーリヤを使いカクタスまたは他のダーリヤに媒助し、そしてピオニー咲ダーリヤが出来上がりました。この長い花梗の半重弁のダーリヤはオランダで作られ、そして極大半重弁ダーリヤとして世界に売り出されました。これはバーンの蘭栽培家エッチ、ホーンスベルド氏の名誉にほかならず、彼は苦心すること七年、千九百四年七月にクインウイルヘルミナ、ヂュークヘンリー、バロンジーデグランセ及びグロリーオブバーンの四種をオランダ園芸協会の品評会に出品し一等賞を得ました。更にドイツの世界博覧会に出品し最高賞を得ました。園芸界はその巨大で美術的な形状、強き花梗、美麗なる色彩に魅せられました。リバプールのケル氏は叫びました「ホーンスベルドのダーリヤは博覧会の誇りであると」。これがドイツを経由してフランスに入り、やはり金牌を得ることになります。アムステルダム、ロンドン、ブリュッセル、その他に於いても同様に賞賛されました。この成功の後、彼は更に新種類の作出に努め、そしてその切花用と花壇装飾用との二大価値は世界に認められました。その後、英米に於いてもダーリヤ専門家により多くの種類を作出しましたが、最高の名誉はオランダに帰せなければなりません。
デコラチーブは千八百三〜四十年頃にドイツで単弁花より出たとの記録がありますが、その後、ショー咲より生まれたのが多いらしく、切花としては一等であります。花壇に於いてもその頑丈なる茎と厚き暗録の葉とは素人栽培にも失敗がありません。切花として強硬なる長き真直の茎はこれに及ぶものは無く、品評会用としてもデコラチーブは巨大なることに於いてこれに及ぶものがありません。なおデコラチーブは欧州では余り貴ばれませんが米国に於いて特に貴ばれています。
ポンポン咲は千八百四〜五十年の頃ドイツで出来たと称せられています。
コラレット咲はフランスの改良種であり、これは千八百九十九年リオンの公園にて発見され、ダーリヤ展覧会に出品されその愛らしき形状により賞賛を博しました。
日本は天与のダーリヤ適地と称せられています。日本のダーリヤ専門家はいたずらに他国のタイプを追わず、新たなタイプのダーリヤを作出するのでなければ到底世界に誇ることは出来ません。日本では従来、一般にカクタス、デコラチーブ、ピオニー等の美大な種類が貴ばれ、その中でもカクタスは最も優勢で人気がありますけれども東京地方のいわゆる玄人で、地方ではピオニーやデコラチーブを喜ぶ傾向があります。しかしながらコラレット、ポンポン、シングルも品評会には不向きですが、一輪挿しやデコレーションとしては中々趣味があります。将来は首の強き切花向きの実用的ダーリヤ及び趣味のある小ダーリヤも徐々に勢力を得るものと信じます。


●2010.07.08
●tenjiku-b
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