漫画「ドカベン」は野球の教科書~ルールブックの盲点の1点~

先週の、野球漫画ネタを書いているときに思い出したエピソードをご紹介します。

~ルールブックの盲点の1点~

(規則の不備ではなく選手自身も知らない又は忘れているという意味)

【野球漫画ドカベン・単行本35巻より】

夏の甲子園・神奈川県予選大会3回戦、明訓高校(主人公・山田が所属)対白新高校との試合で描かれた場面。試合は0-0のまま延長に突入。10回表、明訓高校の攻撃。1アウト満塁で打者は微笑三太郎。

1、微笑はスクイズを試みるが、小フライとなり白新のエース不知火がこの打球に飛びつき捕球し微笑はアウト。

2、スタートを切っていた3塁ランナーの岩鬼正美はそのまま走り続け、3塁に戻らず本塁に滑り込んでいた。

3、一塁ランナーの山田太郎は大きく離塁しており、不知火はボールを一塁に送球し山田がアウトとなり3アウトとなった。

4、白新高校ナインは全員ベンチへ戻り、岩鬼もベンチへ戻った。

5、スコアボードには明訓高校に1点が入り、白新高校のエース不知火は愕然とする。

この試合は、このまま 1-0で明訓高校が勝利した。

(なぜ、岩鬼のホームインが認められたか?)

岩鬼のプレーはタッチアップと同じで、山田がアウトになる前に岩鬼はホームインしていることが明らかであった。白新高校は、3塁にボールを送る“アピールプレー”をして岩鬼をアウトにする必要があったが、選手全員がファウルラインを越えてしまったために得点が認められた。

(得点を防ぐ方法は?)

1.不知火は一塁に送球せずに3塁で岩鬼をアウトにする。

2.山田をアウトにした後、3塁に送球し岩鬼のアウトをアピール(送球だけではアウトにならない)審判に岩鬼のタッチアップが早かったことと、第3アウトの山田と”第4アウト”(フォースアウト)の岩鬼のアウトを置き換えるアピールをする。(第3アウトの置き換え)

3.3塁ランナーがホームインする前に、1塁ランナーをアウトにしていれば3塁ランナーのアピールプレーは必要なしだった。

 

【実際に起きたプレー】

2012年8月13日、第94回全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)2回戦、濟々黌高校(熊本)対鳴門高校(徳島)戦の7回裏、濟々黌の攻撃。

1アウト1・3塁で、ライナー性の打球を捕球した遊撃手は一塁ランナーが飛び出しているのを確認し一塁へ送球して3アウトとなる。濟々黌の3塁ランナーは、スタートを切っていたため一塁送球前に“ホームイン”していた。鳴門高校の選手は、3塁ランナーのタッチアップの離塁が早かったことをアピールせずに全員ベンチへ戻り、済々黌高校に1点が入った。

このプレーの映像です https://youtu.be/syB9w6Lv0SI

私が感心したのは、このランナーが、“ドカベン”を読んでいて、このプレーを狙って発生させたと語っていたことです。(確かに3塁ランナーは大きく飛び出していたが、遊撃手が捕球した瞬間ホームへ走り出していたのが映っている)

(ちなみに同様のケースが、2011年の春の甲子園、2009年にはメジャーリーグでもありました)

 

“ドカベン”をはじめ水島新司さんの漫画は野球を知り尽くしているからこそ描くことが出来るまさに“野球の教科書”と言えると思います。

あの清原和博さんも水島新司さんとの対談で「僕はドカベンから4番打者の心得を学んだ」と語ったように“水島ファン”が多いのも頷けます。

2017.09.20:a-kenji:[コンテンツ]